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ドン・カルロ

メトロポリタンオペラ2011「ドン・カルロ」 2011年6月

メトロポリタンオペラ来日公演の2演目目です。ファビオ・ルイジ指揮。NHKホール1階中央右寄りで、先週の「ラ・ボエーム」より2列ほど後ろなので、踊るような指揮ぶりがよく見えました。S席6万4000円。同じ列の左のほうにフリットリがすわっていて、感激。幕間にファンからサインを求められて、快くこたえてましたね。
今回も入り口でプログラムを無料配布。また冒頭にゲルブ総裁が登場し、「ヴェルディの大作をお楽しみ下さい」と自信たっぷりに挨拶しました。

上演するのは「フォンテンブローの森」の運命の出逢いから始まる、全5幕イタリア語版。1幕、2幕を続けて105分、3幕35分、4幕、5幕を続けて85分。休憩を含めて4時間半を超える長丁場ながら、とにかく曲が重厚で美しく、ちっとも飽きません。いつもながら生の演奏の波動は、体にいい気がする。いいぞヴェルディ。
今年初めにライブビューイングで観たバージョンだけど、演出は違っていて、伝統を感じさせるジョン・デクスターによる1979初演のもの。紋章を描いた重そうな幕や、金モールだらけの豪華衣装(レイ・ディフェン)がいかにも歴史ものという雰囲気を醸し出します。そびえる壁や巨大な宗教画などのセットはシンプルで、派手さや工夫はないけれど、明暗のコントラストがはっきりしていてわかりやすい。

歌手陣については滑り出しでやっぱり、主役キャストが2人とも変更になった痛手を感じてしまいました。カルロ役はカウフマンに代わって韓国人の若手、ヨンフン・リー(テノール)。声が前に出なくてオケに押されるし、やたら濃いメークにも違和感。「あの人に会ったとき」はタイトロール唯一のアリアなのに、聴衆の拍手もためらいがちです。対するエリザベッタ役のほうは、ネトレプコ降板でフリットリが「ラ・ボエーム」にシフトしたため、ライブ・ビューイングでも観たマリーナ・ポプラフスカヤ(ソプラノ)が急きょ代打ち。巧いんだけど、どうにも華がないんだなあ。オケもまったりした印象で、1幕は正直どうなることかと思いました。

しかし! 2幕「サン・ジュスト修道院」のシーンで期待の低音組が登場したあたりから舞台が引き締まり、主役2人もだんだん調子をあげて、結果的には非常に楽しめました。ロドリーゴ役は銀髪のディミトリ・ホロストフスキー(バリトン)。こもったような声質だけど、この役の理想家らしい自意識の強さがにじんで、大好きなカルロとの二重唱「共に生き、共に死ぬ」を格好良く決めてました。
こちらも代役、エボリ公女役のエカテリーナ・グバノヴァ(メゾ)は、自ら呪うほどの美貌、という設定にさほど(?)無理がないチャーミングさ。「ヴェールの歌」をさらりとこなします。エリザベッタが義理の息子の告白をぴしゃりと拒絶するところ、毅然としていい。そしていよいよフィリッポ2世のルネ・パーペ(バス)登場。ホロ様との掛け合いではさすがの声量、存在感です。

3幕は不吉さ満載の「王妃の庭園」のあと、舞台が人でいっぱいになる大がかりな「バリャドリード大聖堂前」、通称火刑の場。民衆の合唱による興奮と、宗教的抑圧の対照が見事。エキストラには日本人が使われているようでした。
4幕「王の居室」でお待ちかね、パーペが「妻は一度も私を愛したことがない」をたっぷりと。ようやく聴衆からもブラボーの声がかかりました。意外と悪役・宗教裁判長のステファン・コーツァン(バス)に迫力があった。素顔がわからないくらいの不気味なメークだけどね。エボリ公女の「むごい運命よ」の途中で、会場はちょっと揺れを感じてヒヤッとしたけれど、影響なく続行してました。
続く「牢獄」で、最大の見せ場「ロドリーゴの死」。ホロ様の哀しく美しい長音が響き渡り、ここあたりではリーも負けてなかった。

終幕「サン・ジュスト修道院」では主役2人が、出だしとは一変ののびやかさ。何度観ても唐突なラストは、奥の墓所から先帝カルロ5世が現れるスタイルでした。
カーテンコールではやはり低音組が大きな拍手を浴び、若いリーはほっとしたように大はしゃぎ。ポプラフスカヤは納得していないのかキャラなのか、クールな態度でしたが、最後にはルイジと主要キャスト全員が声を揃えて「あ・り・が・と」と挨拶してくれました。

今回のメト来日は当初、本国でもありえないスター揃いと発表されたため、不可抗力とはいえキャスト変更のがっかり感が強かった。とはいえ振り返ってみれば手堅い演目、演出を揃え、代役もかなりの水準で、かえってオペラビジネスとしてのメトの底力を感じさせたかもしれません。客席には千住明さんや林真理子さんの姿もありました。

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