欲望という名の電車
パルコ・プロデュース 欲望という名の電車 2011年4月
テネシー・ウィリアムズのあまりに有名な戯曲。実は恥ずかしながら、あんまり予備知識なく観に行きました。パルコ劇場の前の方、中央の席で7700円。観客は若い人が目立ったかな。
松尾スズキの演出は、小田島恒志訳の戯曲をかなり忠実になぞったものらしい。2間きりのコワルスキー家のワンセットで、休憩を挟みたっぷり3時間。
1947年初演とあって、移民やゲイへの偏見がカギになっている。慣れない翻訳劇のせいか、説明が多くて、途中どうも平板に感じてしまった。幕切れに至っては、もっとやりようがあるだろう、なんて思っちゃったりして。ほとんど古典なんだから、そういうこと考えるもんじゃないのだけど。
俳優陣は文句なく巧かったです。しゃべりっぱなしのブランチは、堂々の秋山菜津子。リズム感があり、滑稽なまでの虚勢とか、不安定な感じが前面に出ていたかな。その分、手当たり次第誘惑しちゃうような危うさは控えめ。何もかもうまく行かなくて、生活は破綻し、容貌の衰えにおびえるひとりの女。ティアラや派手なスーツで着飾れば着飾るほど、切ないです。
対する粗野な義弟、スタンリーの池内博之も、妹ステラの鈴木砂羽も安定感があった。やっぱり鈴木砂羽は声がいい。ちなみにラストは二人が寄り添う設定でしたね。
ブランチにひかれるスタンリーの友人、ミッチのオクイシュージが意外な存在感。どうしようもないコンプレックスとか、必死な感じが伝わってきた。裸電球を引っ張ったり、扇風機に髪を吹かれたり、唐突にコミカルな動きになるのには、いささか戸惑ったけど。