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カスケード

岩松了プロデュース「カスケード~やがて時がくれば~」  2011年3月

作・演出岩松了。3月16日初日で、収益の一部を寄付する形での公演となりました。下北沢駅前劇場の、前の方少し左寄りの席で3800円。上演前後にはロビーに岩松さんが陣どってたほか、田畑智子さん、片桐はいりさんらの顔も。

客席のキャパは120人程度でしょうか。すし詰めで、学園祭のような雰囲気。パンフはなく、席に置いたA4の紙両面にキャスト、スタッフと、それぞれの当面の予定が印刷されているという手作りぶりです。並んでいた当日券待ちのお客さんたちが、最前列に座り込んだり壁際に立ったりして、少し遅れて開演。

休憩無しの1時間45分、今回も面白かったです! 俳優陣は岩松さん所属の鈍牛倶楽部の若手が中心で、それぞれにアテ書きしたのでしょうか、いつになくみずみずしい青春っぽさが印象的でした。
内容は、チェーホフ「かもめ」を上演しようとする一座の群像劇。演出家役(小林竜樹)以外は芸名と役名が一致していて、リアルな手触りがある。
冒頭、主要キャストの一人が亡くなっており、配役が流動化。そのあたりの事情を探りつつ、暗転ごとに時間を遡っていく。

役者としての成功への渇望とか、そのためにしてしまったことへの後悔とか、友情の延長のような淡い恋心とかが錯綜。「カスケード」とは階段状になった滝、転じて数珠繋ぎのことだとか。果たしてどんな連鎖が起きてしまったのか? そして、まだ何も起こっておらず、何も知らない頃の健気な会話で幕を閉じる。失ってしまった若い日々。切ないなあ。

狭い稽古場のワンセットで、登場人物は後方と右奥の階段から忙しく出入りする。動きの幅が限られる分、細かいセリフでの笑いが効いていた。客席には演劇関係者が多かったのか、岩松さん自身のパロディや、演劇人の性癖なんかに触れたセリフがよく受けてましたね。

役者さんは皆なかなか上手。声が印象的な清水優、不思議な色気のある尾上寛之。「浮標」ではあまり目立たなかった安藤聖が小柄で可愛く、今村沙緒里も美形。調子の良いマネジャーの永岡佑、先輩女優役でキレキレの吉牟田眞奈も個性を発揮。最後に清水くんが挨拶し、チャリティーについて説明してました。

南へ

NODA・MAP第16回公演「南へ」 2011年3月

作・演出野田秀樹。多くのエンタメやイベントが中止になるなか、東京芸術劇場中ホールに足を運んだ。1階前の方の右寄りで9500円。さすがに空席が目立つ。
開演前に今回の題材や演出に関する女性のアナウンスがあり、野田さんの「劇場の火を消さない」というコメントも流れた。たびたび火山の噴火を表現するので、確かに観ていて辛い感じは否めない。それでも休憩無しの2時間強、最後の野田さんの挨拶まできいて、覚悟のほどというか、なんだか感慨を覚えた。

お話はかなり難解という前評判どおり、混沌としている。「無事山」の観測所の新任職員、南のり平(妻夫木聡)は着任早々、データを読んで大噴火が近いと進言する。しかしプロ野球ファンの小市民的な所長(渡辺いっけい)らに危機感は薄い。それどころか、観測所にもぐり込んでいる謎の女あまね(蒼井優)から、そもそも本物ののり平なのかと問われて混乱するのり平。
そこへ三つ子で旅館を経営しており、噴火を予言できるというミハル(高田聖子)やら、天皇訪問の事前調査だと名乗る一行やらが入り乱れる。この一行、なぜか銀粉蝶が男性で藤木孝がその妻、先導役が野田秀樹という構成で、怪しいことこのうえない。

危機に直面したとき、何を信じるか。権威とは、日本人とは、そして自分はいったい何者なのか。普段は見ないふりをしてやり過ごしている、いろんなあやふやさが白日のもとにさらされる。中盤からは富士山が噴火した300年前と時を行き来しつつ、そういう問いがどんどん積み重なっていく。
共同体の外にいる人々とか、脱北とか戦争とか、ざらつくイメージもてんこ盛り。挙げ句はふりだしに戻るようなSFタッチの展開もあり、要素がすべてばらばらのまま、観客はぽんっと放りだされる。この舞台から何を考えるかは、個々人次第ということなんでしょう。個人的にはなんだか疲れちゃったし、消化不良なんだけど、今はこの宙ぶらりんさがリアルで、切実かも、と思う。

言葉遊びやギャグ、とんだり跳ねたりのファンタジーは今回、割と控えめ。セットも四角い骨組みと、後方で動いて和太鼓が出入りする火山の絵ぐらい。いたってシンプルだ。そのかわり、場面に合わせ様々なものに見立てられる大量のパイプ椅子と、群衆のダンスがイマジネーションをかき立てる。
妻夫木くんは以前観た「キル」のときより、成長したんじゃないでしょうか。か弱い立ち姿、妙な明るさが役柄にあっている。ショートカットの蒼井優ちゃんもまっすぐな印象。野田さんは足をひきずっていて、いつものダントツのキレと比べると今ひとつか。暴れ役は渡辺いっけい、高田聖子が引き受けていた。そして銀粉蝶はさすが、声が格段に通って存在感がありました~ 帰りにチャリティーにちょっと協力。きて良かったです。

EAGLES

EAGLES LONG ROAD OUT OF EDEN JAPAN TOUR 2011  2011年3月

結成40周年となるイーグルスの、7年ぶりの日本ツアー最終日に足を運んだ。いやー、期待以上に楽しかったです! 

早めに東京ドームに到着。予想通り聴衆の年齢層は高め、しかも男性が多い。会場外で早速、ミーハーにグッズを購入。パンフレット2000円、Tシャツ4000円とストラップ1800円。席は1階かなり前、やや左寄りでS席1万2000円です。1階半ばまで埋まっている感じ。総勢100人の世界ツアーだそうで、アリーナ中央のカメラも外国人スタッフでした。
ステージは後方の半円形スクリーンに映像を流すくらいで、いたってシンプル。15分休憩を挟む2部構成で3時間、たっぷり聴かせてくれました。メンバー4人のほか、ギターのスチュアート・スミス、ホーンとバイオリンの4人組、ドラム、キーボードでサポートメンバーは9人。

当たり前だけど、とにかく名曲が目白押しです! メンバーそれぞれソロに個性があり、曲調もブルーグラスからメロディアスなポップ、ハードロックまで本当に多彩だなあ、と改めて唸る。
特にボーカルぶりが60歳を過ぎているとは思えません。グレン・フライのカントリーのり、ティモシー・シュミットの甘さ、荒削りのジョー・ウォルシュ、そして何といってもドン・ヘンリー。見事な太鼓腹には驚いたけど、ブルージーで切ない高音が泣かせます。そしてコーラスの美しさ。走るとか派手な動きは全くないけど、ドンは前列と後段のパーカッションをいったりきたり、グレンもエレピを弾いたりして結構忙しい。

コンサートは印象的なアカペラでスタートし、早くも4曲目で「Hotel California」。圧巻! 津波のような拍手、歓声。9曲目で大好きな「The Boys of Summer」。1階席のおじさんは水割り飲んじゃってくつろいでるけど、1部終盤にくると、さすがにアリーナ勢はスタンディングでしたね。

2部冒頭はアコースティックで、すわってじっくり歌う。「初のミリオンシングル」というグレンの紹介があって、「Take it to the Limit」。そして「One of These Nights 」とどんどん盛り上がり、なぜか全員出身地付きでメンバーを紹介するあたりから、ジョー・ウォルシュがおちゃめぶりを発揮。ギターもハードにロックらしくなる。スクリーンに「STAND UP」の文字がでたのには笑ったけど。2部ラストの「Heartache Tonight 」「Life in the Fast Lane」で大興奮!

あまり間をおかずにアンコールが3曲。ラストはやっぱり、これを聴かなきゃ帰れない「Desperado」でした。これまでの長い紆余曲折に思いをはせたりしつつ、ソロ曲も含む計28曲、きっちりバンドを聴いたって実感しました。充実!Photo_2 Photo

以下セットリストです。

---First part---
01. Seven Bridges Road / セブン・ブリッジズ・ロード (Steve Young cover)
02. How Long / ハウ・ロング
03. I Don't Want to Hear Anymore / もう聞きたくない
04. Hotel California / ホテル・カリフォルニア
05. Peaceful Easy Feeling / ピースフル・イージー・フィーリング
06. I Can't Tell You Why / 言いだせなくて
07. Witchy Woman / 魔女のささやき
08. Lyin' Eyes / いつわりの瞳
09. The Boys of Summer / ボーイズ・オブ・サマー (Don Henley Solo)
10. In The City / イン・ザ・シティ
11. The Long Run / ロング・ラン
---Second part---
12. No More Walks in the Wood / 失われた森を求めて
13. Waiting in the Weeds / 夏の約束
14. No More Cloudy Days / 明日はきっと晴れるから
15. Love Will Keep Us Alive / ラヴ・ウィル・キープ・アス・アライヴ
16. The Best of My Love / 我が至上の愛
17. Take it to the Limit / テイク・イット・トゥ・ザ・リミット
18. Long Road Out Of Eden / エデンからの道、遥か
19. Walk Away / ウォーク・アウェイ (James Gang cover)
20. One of These Nights / 呪われた夜
21. Life's Been Good / この人生に賭けて (Joe Walsh Solo)
22. Dirty Laundry / ダーティ・ラウンドリー (Don Henley Solo)
23. Funk #49 / ファンクNo.49 (James Gang cover)
24. Heartache Tonight / ハートエイク・トゥナイト
25. Life in the Fast Lane / 駆け足の人生
---encore---
26. Take It Easy / テイク・イット・イージー
27. Rocky Mountain Way / ロッキー・マウンテン・ウェイ
28. Desperado / ならず者

ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート

ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート  2011年3月

作曲アンドリュー・ロイド=ウェーバー、作詞ティム・ライスのミュージカルをジェイムズ・ロッコの演出で。東京国際フォーラム・ホールCの1階半ば。S席1万2000円。

「キャッツ」「オペラ座の怪人」の作者が20歳のとき上演したという作品で、休憩20分をはさみ1時間45分とコンパクト。聖書のエピソードにもとづき、もともと学芸会用につくられたとあって、子ども向けのレビューのような印象です。
ヨセフ役のオーディション番組「アメリカン・アイドル」出身アンソニー・フェデラー、ナレーター役のジェニファー・パズは若々しく高音が綺麗だ。ファラオのスチュワート・グレゴリーはプレスリーの物まねをたっぷり。ほかにウエスタンやカリプソ調の曲も。公募によるこども合唱隊42人は開幕前から舞台上で遊んだりして、大活躍でした。

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