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METライブビューイング「ドン・カルロ」

METライブビューイング2010-2011第4作「ドン・カルロ」 2011年1月

またメトロポリタン歌劇場の録画で、ヴェルディの歴史ドラマ「ドン・カルロ」を観てみた。今度は新宿ピカデリー・スクリーン6の前の方、中央の席で3500円。若手のヤニック・ネゼ=セガン指揮、ニコラス・ハイトナー演出。

2009年のスカラ座来日公演で観たことがある演目だけれど、バージョンが違っていて今回はイタリア語5幕版。冒頭に「フォンテンブローの森の場」が加わり、悲劇の発端となるカルロとエリザベッタの甘いロマンス、切ない別れが描かれる。コベントガーデンで披露済みの新演出だそうで、黒を基調にしつつ、ところどころ効果的に赤を配した重厚な雰囲気がよい。

さすがに歌手陣はハイレベルで充実してました。タイトロールのロベルト・アラーニャはやや線が細いけれど、父王との確執、継母エリザベットへの思慕にうじうじ悩む若者の感じがよく出ていた。アラーニャに合わせたのか、王妃エリザベッタで細身のマリーナ・ポプラフスカヤもずっと抑えめだったが、徐々にプライドの高さをにじませ、ハイライト4幕の「世の虚しさを知る神」ではなかなか聴かせた。
ドン・カルロと言えばフランドル(ネーデルランド)独立の理想に燃え、誰がやっても格好良くなりそうな盟友ロドリーゴ。2010年ロイヤルオペラの来日公演で観たサイモン・キーンリーサイドが演じ、カーテンコールでも大きな拍手を浴びてましたね。若々しさはないけれど、王の心情に触れるシーンなど、細かい視線の演技までチェックできて満足。ライブビューイングならではだなあ。大好きな「友情の二重唱」、4幕の「わが最後の日」の絶唱と、つくづく得な役です。
カルロに匹敵するキーマン、父フィリッポ2世はフェルッチオ・フルラネット。4幕冒頭の「一人寂しく眠ろう」はかなりの苦悶ぶりで、ルネ・パペより重々しかったかも。敵役のエボリ公女はミラノ座の時と同じアンナ・スミルノヴァだけど、ずいぶん貫禄が増した感じ。重厚なこの演目の中では数少ない明るい場面を担い、技巧を要求される「ヴェールの歌」も楽勝そうでした。

シンプルな舞台ながら、巨大な十字架やキリストの肖像、黄金の宮殿などで権力者の猜疑と孤独、宗教の不寛容など、シビアなテーマを強烈に表してました。1867年のオペラ座初演時にはナポレオン3世を迎え、スペイン出身で熱心なカトリック信者の皇后が途中で席を立っちゃったというエピソードもあるらしい。先王の亡霊がカルロを連れ去る幕切れは、今回もどうにも唐突だなあ、と感じたけれど、ひょっとすると、これ以上は描きようがない微妙すぎるテーマだったのかもしれませんね。

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