« タンゴ | トップページ | 立川談志一門会「金明竹」「時そば」「落語チャンチャカチャン」「へっつい幽霊」 »

国性爺合戦

国立劇場11月歌舞伎公演 通し狂言「国姓爺合戦」 2010年11月

国立劇場大劇場。前の方、中央の席で1万2000円。近松門左衛門の著名な時代浄瑠璃を珍しい通しで。ベテラン揃いの配役で、歌舞伎好きが集まっている感じ。

序幕、大明御殿の場は南京城が舞台。あまり演じられない導入部です。異国情緒の美術や華やかな「花いくさ」に、血なまぐさい展開があいまってまさに極彩色。敵の韃靼と通じ、明国滅亡の引き金をひく李蹈天に中村翫雀さん。堂々たる悪役ぶりがいい。

肥前国平戸の浦の場で、いよいよ20年ぶりの和藤内(実在の英雄、鄭成功がモデル)、団十郎さんが登場。明るく長閑な干潟にずんと立ち、水平線を見つめる後ろ姿がでかい。ここではまだ隈取りはなく、若くてやんちゃな漁師姿という趣向です。蛤と鴫のエピソードがちょっとユーモラス。船で逃れてきた栴檀皇女(せんだんこうじょ、中村亀鶴)を助けて、父の祖国の再興に立ち上がることを決意します。

休憩を挟んで二幕目、暗めの千里ヶ竹の場は立ち回りがたっぷりだ。和藤内は隈取りで勇壮さを表し、なんと素手で「虎狩り」。さらに官人(韃靼兵)と闘って首をひねり、手下にした印に全員の月代を剃る。大暴れだけど、どこかコミカルで、おおらかです。

和藤内親子が旧知の将軍・甘輝を頼っていく三幕目、獅子ヶ城楼門の場で甘輝の妻・錦祥女役の大御所、坂田藤十郎さんが登場。この役は37年ぶりとか。ピンクの袖がひらひらして、妙に可愛い。声も明るく、とても79歳には見えません。門の上から、幼いときに別れた父、老一官(鄭芝龍、市川左団次)を認めて、切々と泣かせます。堂々たる立女形ですねえ。とはいえ、夫が留守なので勝手なことはできず、老一官の妻、渚(中村東蔵)だけを、捕らえたと偽って城に入れます。

四幕目、獅子ヶ城甘輝館の場は、その東蔵さんが大活躍でした。小柄な体で縄に縛られたまま、味方になるよう甘輝を必死に説得。声が通ります。甘輝が「韃靼を裏切って和藤内に味方するには、妻を殺さなければならない」と言い出すと、今度は身を挺して錦祥女をかばう。激しい動きも存分です。ストーリーはお約束、義理と情けの板挟み。結局、甘輝は和藤内に味方できないことになり、錦祥女は合図として流水に紅を流します。

次が有名な紅流しの場。城外の石橋にどっかと立つ和藤内は、水に流れる紅をみつけ、「南無三、紅が流るる!」と怒り心頭。真っ直ぐな人だなあ。母奪還のため城へ向かう花道で、元禄見得や飛び六法で拍手。ちょっとあっさりしてる気もしたけど。 

大詰め、元の甘輝館の場で、いよいよ和藤内と甘輝の両雄が対決します。甘輝の中村梅玉さんは初役だそうですが、長い髭に沈着さがにじむ。あわや斬り合い、というところで錦祥女が止めに入りますが、なんと彼女はすでに虫の息。「自分を犠牲にしても、夫と親兄弟とを味方にしたい」という妻の健気さにうたれ、甘輝はついに和藤内と共に闘うことを決意します。金ぴかのきらびやかな装束に改め、立派な主従となった二人をみて、「義理の娘だけ死なせるわけにいかない」と、渚まで自害しちゃう驚きの展開。幕切れはなんだか悲愴だったけど、見応えがありました~。

« タンゴ | トップページ | 立川談志一門会「金明竹」「時そば」「落語チャンチャカチャン」「へっつい幽霊」 »

歌舞伎」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 国性爺合戦:

« タンゴ | トップページ | 立川談志一門会「金明竹」「時そば」「落語チャンチャカチャン」「へっつい幽霊」 »