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「黴菌」

シアターコクーン・オンレパートリー2010「黴菌」 2010年12月

作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ。Bunkamuraシアターコクーンの1階後ろの方でS席9500円。

昨年末に観た「東京月光魔曲」に続く昭和3部作の2作目。笑いの要素を散りばめているものの、前作のような猥雑さは影を潜めた。いびつな家族の物語に、終戦を挟んだ昭和ニッポンが投影される。

舞台は郊外に建つ、五斜池家のリッチな洋館だけ。1945年の、閉塞色濃い終戦直前から始まる。医師の山崎一と高橋恵子の長男夫婦、軍人の影武者として人目を忍んで暮らす生瀬勝久の次男、ふらふらしている北村一輝の四男が同居している。幼いころの三男の死をめぐる後悔と疑念から、兄弟の関係はぎこちない。

役者陣は豪華で、みな達者。その分、どうも焦点が拡散する感じがしちゃいました。長男によって新薬の実験に使われてしまう岡田義徳と犬山イヌコ夫婦、そんな長男に反発する息子の長谷川博己までは、なんとか把握できる。そこへ、四男と、婚約者で可憐さ全開のともさかりえ、一家に出入りする工員の仲村トオルという三角関係が重なる。特に仲村トオルが大仰に演じる、気が利かない善人という設定が妙に存在感が大きい。
さらに舞台回しとして、仲村トオルの妹で当主の愛人、緒川たまき、使用人の小松和重、池谷のぶえらがからんできて、いったいどこを観ていいのやら。

嵐の夜、五斜池家の事業の破綻が明らかになり、ショッキングな事件も起きて急展開。停電と降りしきる雪が効果的。しかし幕切れは、敗戦というどん底の解放感を背景にして、家族の再生が予感される。北村一輝の独特の声が、繊細さを感じさせてよかった。

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