2010年喝采漬け
年末に2010年の観劇記録をまとめてみます。毎週のように、何かしらエンタテインメントに足を運んでいたので、息もつかせぬ喝采漬けでした。
なんといってもハイライトは、9月の英国ロイヤル・オペラ「マノン」でしょうか。キャスト変更のハプニング相次ぐなか、期待を一身に集めて無事に来日したネトレプコが、劇場全体を振るわせる圧巻のプリマ・ドンナぶりを見せつけ、一流の誇りというものを感じさせました。オペラでは、7月のトリノ王立劇場「ラ・ボエーム」のフリットリも美しく、実力があって素敵だったし、ほろ苦い物語にも魅せられました。2、3月には新国立劇場「トーキョーリング」をついに完走。
もう一つのハイライトは、やっぱり4月の歌舞伎座さよなら公演「助六由縁江戸桜」。一連のさよなら公演では、「家の芸」を数々堪能したけれど、「助六」の団十郎、玉三郎、仁左右衛門、菊五郎、勘三郎…という超豪華配役に、徹頭徹尾現実離れした破天荒な展開は、図抜けた存在感でした! 市川宗家については年末、海老蔵事件なんてがっかりの展開もあったけど…
歌舞伎同様の伝統芸能といえば、文楽。九月公演第二部「桂川連理柵」が、チャリ場から心中へと変化に富んでいて面白かったかな。嶋大夫さん、熱演でした。九月公演第一部で、没後40年の三島歌舞伎「鰯売恋曳網」を文楽に置き換えた咲大夫さん、2月に極めつけ「曾根崎心中」を遣った吉田蓑助さん、それから9月の住大夫さんの素浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」も楽しみました。
いちばん数多く観たのは、演劇でしょうか。いつも楽しみにしている岩松了さんは、9月のシアターコクーン「シダの群れ」が、お馴染みの深い会話劇で目が離せなかった。阿部サダヲの切なさが際立ってたけれど、江口洋介も案外渋かった。
意外だったのは、5月のパルコ・プロデュース公演「裏切りの街」。三浦大輔はエグイ内容なのに、不思議な雰囲気があることを発見。嬉しい驚きです。秋山菜津子、田中圭もよかったし。
ほかに印象的だったのは、11月に来日したロベール・ルパージュの「ブルードラゴン」。凝った大人の舞台でしたね。ちなみに市川宗家に対抗する注目株、亀治郎さんが出た10月の彩の国シェイクスピア・シリーズ「じゃじゃ馬馴らし」も、蜷川幸雄演出のオールメール・シリーズでけっこう面白かった。同じく大物の野田秀樹は、「ザ・キャラクター」が圧倒的に話題だったけど、私としては9月のNODA・MAP番外公演「表にでろいっ!」が、小規模ながらさすがのリズム感、と思いました。
ミュージカルでは5月のブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」で期待通り、本場の抜群の歌唱力を、なんと最前列で堪能。とにかく「リッスン」は名曲です!
名曲といえば、コンサートでは7月の久保田利伸コンサートツアー「Timeless Fly」で感激。ついに「ミッシング」を生で聴いたのが、幸せでした~
そして年末は談春さん独演会、感動の「文七元結」でしめくくりました。落語も志の輔、鶴瓶、喬太郎、三三……と聴くうちに、噺家さんの個性というか、演じる者の自意識みたいなものを感じるようになってきて、ますます面白いなあ。
最後に番外編を2つ。ひとつは10月のワーナー創立40周年記念のイベントで、なんと初の武道館という大御所山下達郎さんが、メッセージをこめて歌った「希望という名の光」。もうひとつは11月、立川一門会でトークの予定を急きょ変更し、病後の談志さんがついに「へっつい幽霊」を演じたこと。いずれも長いキャリアの重みというか、舞台にこめる思いと伝える力に圧倒されました。やっぱりその場に居合わせて目撃するということは、インパクトが大きい経験です。
いやー、1年間、こうやって抜粋するだけでも大変。ちょっと詰め込みすぎかな~
とはいえ2011年は、オペラの引っ越し公演ラッシュで多忙必至だし、落語もいろいろ聴きたいし、暇にはなりそうにありません。来年も、いろんな感動に出会うぞぉ!