« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

タンゴ

シアターコクーン・オンレパートリー2010 「タンゴ」 2010年11月

S・ムロジェック作、長塚圭史演出。Bunkamuraシアターコクーンの1階後ろの中央で9000円。

アルトゥルが家族と演じる論戦、ドタバタを、生成と木目の移動する四角い箱、透明アクリルの家具という、串田和美のシンプルな美術で表現。床に開いた穴から唐突に人が出入りしたり、小道具を取り出したりするのが面白い。演出家が透明人間よろしく片隅にたたずんで成り行きを見守っていて、どこかお伽噺っぽい現実感のなさを印象づける。

著名な戯曲で、冷戦期の1965年にポーランドで初演されたとか。長大で思索的なセリフに、乾いた笑いが散りばめられ、ぎっしり内容が詰まっている感じ。自由を得た父母の世代と、秩序の回復を願う若者の対立。体制の中に反抗の対象を見失った若者の、未熟な暴走。破綻の末に、空っぽのステージに鳴り響くタンゴの虚しさ。

とにかく豪華俳優陣が達者でした! 主役アルトゥルの森山未来は、終始イライラしながら、大量のセリフを早口でまくし立てる。いつもの、ちょっと猫背の首筋がもろくて繊細だ。圧倒的なのは、調子っぱずれの父ストーミルの吉田鋼太郎さん。よく耳に届く声とリズム感で、出てきただけで舞台全体を引き締める。期待の秋山菜津子さんは母エレオノーラを、割と控えめに演じ、危うさと上品さのバランスが絶妙。アルトゥルが伝統的な結婚を望む、従姉妹アラの奥村佳恵も幼さが可愛かった。
みなさん表現が豊かで存在感も申し分ないのに、後半どうも間延びしたと感じたのは私だけか。ちょっと森山くん、一本調子だったかも。

ブルードラゴン

The Blue Dragon-ブルードラゴン 2010年11月

マリー・ミショー、ロベール・ルパージュ作、ロベール・ルパージュ演出。東京芸術劇場中ホールで1Fほぼ中央、6500円。演劇祭フェスティバルトーキョー参加作品で、劇場の周囲も賑わっているし、観客は年配のかたが多くて通な雰囲気。芸術の秋ですねえ。

ルパージュは「シルク・ドゥ・ソレイユ」の演出で知られ、先日もMETのライブビューイング「ラインの黄金」の奇抜な装置を観たばかり。でもテクノロジー先行という印象はなく、まずシナリオが面白かった。
し がらみから逃れ、流れ着いた上海で画廊を開く50がらみのピエール(アンリ・シャッセ)は、野心的な若き現代美術家シャオ・リン(タイ・ウェイ・フォー) と付き合っている。そこへピエールの元妻で、モントリオールの広告代理店幹部という重責に疲れきったクレール(マリー・ミショー)が、一晩の宿を求めて訪 れる。目的は人生を切り替えるため、中国から養子を迎えることだが、思わぬトラブルがあって…。

序盤にカットインするCM映像で、急速な経済発展と体制とが表され、舞台である現代中国が抱える矛盾、さらに登場人物3人それぞれの屈託が響きあうところが巧い。そこここに軽妙なユーモアが漂い、サービス精神もたっぷりだ。

そんな大人びたシナリオを、予想以上に抑制が効いた演出で表現。舞台は上下2層に分かれていて、冒頭の書道シーンに登場する「一」を思わせる。セリフにはフランス語、英語、中国語が交錯するが、視界の中央に字幕があって、すんなり頭に入ってきた。
窓だけで表す機内や、遠くを走る小さい列車、自転車で駆け抜ける外灘と対岸の高層ビル群。イメージを膨らませる場面転換も滑らかだ。装置を動かす音が不思議と気にならない。
終盤の雪のシーンで、シンガポール出身のダンサーだというタイ・ウェイ・フォーのしなやかなダンスに合わせ、粉雪が舞うあたりは、お得意の映像表現なのかな。観客に判断を委ねる幕切れもお洒落。

ドリ×ポカリ~イキイキ!~

POCARI SWEAT 30th SPECIAL LIVE ドリ×ポカリ~イキイキ!~ 2010年11月

DREAMS COME TRUEによるポカリスエット30周年記念イベント。日本武道館の2階左側の中ほどで、7300円。FUZZY CONTROLのオープニングアクトがあり、その終わり頃に到着した。入り口で青いポカリ色のバンダナを貰い、ステージも青ずくめ。聴衆には若い女性が多くて熱気がある。

冒頭で中村正人が「今日はLOVE LOVE LOVEも、未来予想図Ⅱもやりません! 二度とライブでは聴けないかもしれない曲ばかりです」と宣言。後ろにいた熱心な女性ファンも「マニアックだなあ」とつぶやく選曲らしかったけど、ちょっと大人っぽい雰囲気でなかなか良かった。シンセ、キーボード、ドラムにホーンセクションという編成で、演出はほぼライティングだけ。

久々の武道館とのことで、のっけから吉田美和は「(客席が)近いよね~」とハイテンション。長いウエーブヘアをなびかせ、ミニスカから足を見せてフリンジのついたブーツ。後半はシャツに着替えて、おへそも出しちゃう。重めのリズムのある曲が多くて、とにかく踊りまくるし、40代にしてまさに「生涯一ガール」の気概といえましょう。振付ではダンサーと手でハート形を作るアイデアがよかった。

曲の間に必ず正人さんの、なぜか漫談調のMCが入り、そのへんもちょっと普通のコンサートではない。初めて吉田美和に会ったとき、電車のなかで「デモデープも作ってないの」と説教したら、「じゃあ、ここで歌います」と言って2曲歌われ、それを聴いて自分は歌手の道を諦めた、その1曲です、という紹介があって「週に一度の恋人」。ドラマだなあ~。

前半、美和ちゃんのイヤモニが不調になったり、ダンスを間違えたと言って曲の最初のほうをやり直すハプニングも。中澤新栄さんのソロをはさんで約2時間。本編ラストはCMの「生きてゆくのです」で、客席も一緒に歌い踊り、アンコールのラストは「うれしい!たのしい!大好き!」で大いに盛り上がりました。やっぱりドリカムは楽しいなあ。以下セットリストです。

1.よろこびのうた
2.たかが恋や愛
3.DA DIDDLY DEET DEE
4.花曇りの日曜日
5.どうやって忘れよう?
6.週に1度の恋人
7.哀愁のGIジョー
8.雨の終わる場所

9.未来を旅するハーモニー
10.今日この佳き日
11.go on,baby!
12.PEACE!
13.flowers
14.UNPRETTY DAY!
15.行きたいのはMOUNTAIN MOUNTAIN
16.スキスキスー
17.生きてゆくのです♡

~Encore~
18.ねぇ
19.うれしい!たのしい!大好き!




METライブビューイング「ラインの黄金」

METライブビューイング2010-2011「ラインの黄金」 2010年11月

番外編で、NYメトロポリタン歌劇場の今期オープニングを飾った、ワーグナー「ニーベルングの指輪序夜・ラインの黄金」のライブビューイングに行ってみました。10月9日の公演で、東劇での試写会です。

指揮はジェイムズ・レヴァイン。怪我から回復したものの、まだちょっと歩きにくそうでした。ヴォータンは威風堂々のブリン・ターフェル、フリッカがさらに貫禄十分のステファニー・ブライズ、アルベリヒにエリック・オーウェンズというキャスティング。
心躍る客席の様子、驚きの宙づりなどメイキング場面、さらに楽屋でのターフェルのウエールズ語まじりのインタビューが合計25分程度あってから開幕です。

今回はなんといっても、「シルク・ドゥ・ソレイユ」で知られるロベール・ルパージュの新演出が話題。セットが45トンもあって、そのためにわざわざ舞台を補強したそうです。
案外シンプルだけれど、確かに意表をつく立体的な装置でした。左右に巨大な軸をわたし、ずらり並べて取り付けたピアノの鍵盤のような縦長のパネルが、自在に回ります。冒頭ではそこにコンピューター制御の映像で水底や泡を映しだし、ラインの乙女がいきなり吊り上げられるスペクタクル。
圧巻はアルベリヒの黄金を奪おうと、地底ニーベルハイムに降りていくシーンでしょう。ヴォータンとローゲが宙づりになって、斜め角度からパネルで作った巨大な階段を下りていく。右側の扉から光が長く差しこんで壮観。またラストでは、パネルを立てて舞台いっぱいに作った壁の中央に、幻想的に輝く虹の道が現れ、神々がまた宙づりになり垂直方向に、ヴァルハラ城へと歩いていきます。もっとも、アルベリヒの変身シーンの大蛇は意外に普通の人形でしたが。

歌とオケにも迫力があったけど、どうも今回はセットに目を奪われがち。昨年、新国立で観たときの方が饒舌に、なんとも人間くさい神々の苦悩とか身勝手さを感じられた気がします。生の舞台と映像の違いかもしれませんが。カーテンコールではローゲのリチャード・クロフトだけちょっと不評でしたね。休憩無しの3時間。ちょっとヘビーだったかな。

100年MUSIC FESTEIVAL

WARNER MUSIC JAPAN 40th.Anniversary~100年MUSIC FESTIVAL~第二夜  2010年10月

ワーナー創立40周年記念で、所属アーティスト9組が2曲ずつ披露するお祭りライブに行ってみた。日本武道館。1F右隅で、ほとんど後方から観る感じだが、前の方なので舞台が非常に近く、客席の感じもよくわかる。7000円。

赤坂泰彦の司会と洋楽ヒット集のビデオでつないでいくのだけれど、インターバルが長く間延びするのは致し方ない。開演前は首にタオルをかけたコブクロファンが目立つ以外、客席の熱気も薄いと感じたけれど、出演陣はみな実力派。不幸なことにイベント直前、吉田社長が亡くなったという事情もあって、想像以上に胸に迫る、貴重なライブでした。

まず出演アーチストが全員紹介され、いきなりお目当てのRIP SLYME。大好きな「Good Times」と「熱帯夜」。一気に盛り上がるし、客席の隅の方まで手を振ってくれるし、格好良いな~。
コブクロのバンドが登場して、Superflyの「Wildflower」「愛をこめて花束を」。馬場俊英で「勝利の風」「私を必要としてくれる人がいます」。
the brilliant greenは川瀬智子ちゃんが「お願いしま~す」って感じで登場し、脱力したいい感じで名曲「There will be love there」。「2曲しか歌えなくて、大人の事情は難しい」とかぶつぶつ言いながら「LIKE YESTERDAY」。最後にサポートメンバーが誕生日だと紹介してました。

長めの休憩を挟み、オリジナルのバンドメンバーが登場していよいよ竹内まりや。「元気を出して」はちょっと苦しそうなところもあったけれど、声が太く力強い。50代半ばでこんなに可愛いとはどういうことだ。白いパンツにブーツだし。「吉田さんも好きな曲でした」と語り、涙ぐみながら「人生の扉」。じんとする。
続いてギターを弾いていた大御所山下達郎。会場全体が異様に盛り上がる。なにしろ「SPARKLE」だもの。懐かしいけれど、リズムが格好良く声に響きがあって、いまだに新鮮。「デビュー35年にして初めて武道館で自分の歌を披露する」という打ち明け話があって、「希望という名の光」。途中で「吉田さんが今やっているツアーを聴きに来た、歌は無力なこともある、いくら辛くても生きていこう」と熱く語り、泣けた~。

再びコブクロのバンドが登場し、帽子をかぶったトータス松本が元気よく「明星」。「今日は待ち時間が半端じゃない」とか笑わせながら、「ハッピーアワー」。やっぱりこのR&Bボーカルは好きだなあ。BONNIE PINKが「A Perfect Sky」「カイト」を歌い、トリはコブクロ。黒田さんがふざけて笑わせてから、まだリリースの予定はないという「Blue Bird」を披露。小渕さんが何を思ってか、涙ぐみながら「蕾」。ラストはお得意、マイクを外して生声で歌う。さすが、聴かせます。バンドメンバーを紹介し、2人だけになってもう1曲、「桜」。画面に歌詞を流して会場と一緒に歌い、エンディングとなりました。かれこれ3時間半ぐらい、なかなか楽しめました!

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »