椿姫
英国ロイヤル・オペラ ヴェルディ作曲「椿姫」 2010年9月
NHKホールの2階右寄り、A席47000円。マノンと同様、パッパーノ指揮。リチャード・エア演出。
いやー、波乱の展開でした。当初発表のタイトロール、アンジェラ・ゲオルギューが来日前に降板。開幕前にディレクターが登場して、代役エルモネラ・ヤオを紹介した。ところが第1幕「ヴィオレッタの家のサロン」を歌ったものの、複雑な心理を描く聴かせどころの「花から花へ」で声が出ず、高音をだいぶ省略してはらはらさせる。ヴィオレッタと劇的な恋に落ちるアルフレード役、ジェームズ・ヴァレンティも長身で悪くはないけれど、線が細い印象。
30分の休憩後、再びディレクターが登場して、パッパーノの判断で、という理由でアイリーン・ペレスへの交代を告げる。ヤオの不調ぶりからすれば、やっぱりとは思うものの、さすがに初日に続いて2度目の交代。ロイヤル・オペラたるもの、というがっかり感はあるから、会場からはブーイングが。通訳の女性がしどもどして、ちょっと気の毒だったな。
というわけで第2幕「パリ近郊の家」からは、サイモン・キーンリサイドが一身に舞台を支える感じになった。妹の縁談を引き合いに出して別れを迫るパパ、ジョルジョ・ジェルモンの役で、「天使のように清らかな娘を」、「プロヴァンスの海と陸」がなかなか聞かせる。場面転換の後「フローラの家のサロン」では、「ジプシーの歌」「闘牛士の歌」が楽しい。幕切れの八重唱あたりからペレスも健闘。
25分の休憩を挟み、なんとか第3幕「ヴィオレッタの寝室」へ。深い絶望を漂わせる「さようなら、過ぎ去った日よ」は、なかなかのもの。ついに駆け付けたアルフレードと再会し、パパも過去の仕打ちを悔いるけれど、悲しく息を引き取る。
言うまでもなく音楽は素晴らしいし、演出がとてもお洒落だった。第1幕の茶系インテリアのサロンに、金箔が降り注ぐ享楽的なシーン、第2幕第1場の横から差し込む陽光の陰影、第2場の立体的で大胆な背景。そして第3幕の、巨大な窓に謝肉祭の行列がシルエットで浮かび、その楽しさと室内の悲劇がくっきりと対照をなすところなど。
とはいえマノンと同様、この演目はやっぱりタイトロールが与える印象の比重が大き過ぎる。舞台は生もの、ということを、改めて実感しました~。カーテンコールでは急な登板をこなしたペレスに温かい拍手が。英国大使館関係者らしき一団も熱心に手を叩いてましたね。ちなみに最終日は、なんと中1日でネトレプコが代役を務めたそうです。んー、さすがのプロ根性。
« 文楽第二部 「勢州阿漕浦」「桂川連理柵」 | トップページ | 竹本住大夫 素浄瑠璃の会「仮名手本忠臣蔵」 »
「オペラ」カテゴリの記事
- 2024年喝采尽くし(2025.01.01)
- 魔笛(2024.12.15)
- 夢遊病の女(2024.10.14)
- コジ・ファン・トゥッテ(2024.06.01)
- エウゲニ・オネーギン(2024.02.03)
コメント