ザ・キャラクター
NODA・MAP第15回公演 ザ・キャラクター 2010年6月
作・演出野田秀樹。池袋の東京芸術劇場中ホール。若い人が多く、当たり前だけど盛況です。1階中央のかなり前の方で9500円。
書道教室を装ったカルト教団で起きる混沌と犯罪。漢字(キャラクター)を駆使し、いつにも増して2重、3重の「意味」が舞台に溢れかえる。あまりにリアルな地下鉄サリン事件をベースにしつつ、ギリシャ悲劇のイメージを重ねたスピーディーな展開。正直、何が何だか……。全体に白を基調にした陰影のある装置で、散乱する半紙が印象的。めまぐるしい仕掛けの数々は、さすがに面白い。
今回かなり舞台を間近に観て、やっぱり教祖の妻を演じる野田さんのリズム感が、頭ひとつ抜けているなあ、と実感した。小さな跳ねかたとか、セリフの間とか。普通の俳優では、なかなかついて行けないだろう。
とはいえ共演陣は充実していた。特に、弟を奪還しようと教団に潜入する宮沢りえ。幻想的な冒頭からハッとするほど美しく、声、動きもしなやか。できるなあ。それから大家の橋爪功さん。野田流のリズムにも飲まれず、びくともしない独特の「軽み」がある。
ただ教祖の古田新太、新人を演じた田中哲司、神話から抜け出したアルゴスの池内博之らは、いずれも手堅いけれど、今ひとつ説得力がなかったような。怪我で休演したオバチャン役の銀粉蝶さんがいたら、だいぶ印象が違ったかも、と思う(代役は大西智子)。たぶんオバチャンが教団内の狂気と現実との結節点となる、重要な役だったと思うので。
というわけで、個人的には、膨大なイメージの奔流と、深刻で悲劇的なテーマをどうも消化しきれず、という感じでした。現代人、あるいは日本という国の信じるものの不確かさ、その罪といったものを描いているのだろうけれど… 不明を恥じます。
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