ファウストの悲劇
シアターコクーン・オンレパートリー2010 ファウストの悲劇 2010年7月
クリストファー・マーロウ作、河合祥一郎訳、蜷川幸雄演出。Bunkamuraシアターコクーンの1階ほぼ中央。S席9500円。
ファウスト伝説を描いた16世紀末の英国の戯曲を、歌舞伎の一座が演じるという入れ子構造の設定だ。ハーフミラーの後方に楽屋が透け、どたばたしている奈落の内部も丸見え、という趣向。
舞台上も派手な衣装の悪魔や天使のフライングあり、火や煙ありで賑やか。不死身のファウストが首を落とされても生きていたり、男優(鈴木彰紀さん)がつけ胸で過去から呼び出された美女ヘレナを演じたり。めまぐるしくて猥雑で、この世はすべてうたかたの夢、という退廃的なイメージが色濃く漂う。
俳優陣は金髪・黒マントのファウスト博士、野村萬斎が現実離れしていて、さすがの切れ味。契約によってあらゆる欲求を実現するメフィストフェレスの勝村政信は、対照的な白スーツで2階席を含めよく走り回り、ファウストとのちょっと妖しい関係を匂わせて秀逸。
ファウストの胡散臭さを告発して鹿の角をつけられる騎士の長塚圭史、弟子の白井晃、馬番の木場勝己と贅沢なキャストだが、全体にコミカル。主役2人の存在感と、次々繰り出される仕掛けに目を奪われちゃったかな。
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