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アット・ホーム・アット・ザ・ズー

シス・カンパニー公演 At Home At The Zoo  2010年6月

エドワード・オルビー作、千葉哲也演出。三軒茶屋のシアタートラムに初めて行った。小さい劇場で、観客も演劇少女っぽい人が目立つ。当日券に人が並び、バーに腰掛けるだけの半立ち見もある。少し後ろめの席で7000円。

中央に長いすを置いただけのシンプルな舞台だ。二人芝居が2幕。手の届くような距離で、豪華な顔合わせの俳優がしゃべりまくる濃密さだ。その第1幕が、2007年に書き足されたという「ホームライフ」。
設定はアッパーイーストサイドにある部屋で、夫婦と娘二人、猫にインコといういかにも満ち足りた暮らしを送っている。ところが教科書出版社に勤める常識人ピーターに、料理をしていた妻のアンが過激なことを話し始めて亀裂がのぞく。
アン役の小泉今日子がいい。観るのは2008年の「恋する妊婦」以来かな。ちょっと似た匂いのする役で、平凡なのに危険。いかにも倦怠期といったステロタイプの重さがなく、あけすけな会話にユーモアが漂ってリアルだ。いい女優さんだなあ。

休憩なしの第2幕は、1959年に書かれた「動物園物語」。さいぜんのリビングの壁が手前に倒れて公園が現れる、意表をつく転換だ。妻との会話で不安定な気分を抱えたピーターが、セントラルパークのいつものベンチという安全地帯で本を開いていると、通りすがりのジェリーという男がうるさく話しかけてくる。
1幕に続いて受け身いっぽうのピーターを演じる堤真一が、なんとも強靱だ。色気を抑えて、ほとんどずっと戸惑った顔をしているわけだが、わざとらしくない。正体不明のジェリーにちょっと好奇心をおぼえたりして。巧いなあ。
コミュニケーションを求める側の、貧しく孤独なジュリー役は大森南朋。セリフが多いだけに、こもった感じが惜しい。武市さんの撮影、終わったんだなとか、余計なこと考えちゃいました。ちゃんとわかったとは思わないけど、誠実さを感じる舞台でしたね。

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