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二月大歌舞伎「爪王」「俊寛」「ぢいさんばあさん」

歌舞伎座さよなら公演二月大歌舞伎 2010年2月

歌舞伎座もいよいよ残すところほぼ70日。昼の部で、途中、食堂でお寿司を食べながら11時から4時前まで観劇した。十七代目中村勘三郎二十三回忌追善ということで、ゆかりの演目に加え華やかな口上があり、2階のロビーに舞台写真が飾られていた。1階中ほどで2万円。

「爪王」は戸川幸夫の鷹匠の物語を、平岩弓枝が脚色した舞踏劇。長唄に合わせ雪の中で、鷹の七之助が狐の勘太郎相手に舞う。女形として修業中、という感じ。危うい雰囲気がなかなかいいです。
お楽しみ「俊寛」は当代・勘三郎さんがうらぶれた主役を熱演し、丹波少将が勘太郎、千鳥が七之助。俊寛がついに左団次さん演じる理不尽な瀬尾太郎を斬ってしまい、それを上品なたたずまいの丹左右衛門(梅玉さん)が船から悠然と眺めているのにびっくり。「未来で」と叫ぶ別れのシーンのあとも、回り舞台で岩から船を見送る俊寛の悲哀をじっくり見せるところは迫力があった。

休憩を挟んでお楽しみの口上。温かい雰囲気に勘三郎さんのお人柄が出てましたね。そして仁左右衛門さんがいたずらっけがあって巧い。そのままの空気で森鴎外原作、宇野信夫作・演出の「ぢいさんばあさん」。伊織が仁左右衛門さん、その妻るんが玉三郎、憎まれ役の甚右衛門が勘三郎。前半、若い時代の夫婦仲むつまじいあたり、ベタでやり過ぎかなと思うけれど、それが年老いて再会するシーンの稚気につながる。わざとらしさを超越する軽やかさは仁左右衛門さんならではかも。

ジークフリート

ジークフリート 2010年2月

新国立劇場で1階中程やや左のいい席。2万3625円。

楽劇「ニーベルングの指輪」で昨年の序夜「ラインの黄金」、第1日「ワルキューレ」に続いて第2日を観る。上演も2年がかりだもんなあ。大作過ぎる。指揮は引き続き、髪がツンツンしているダン・エッテインガー、オケは東フィル。聴衆はやはり男性比率高し。開演前からさあ、ワーグナーだぞ、という雰囲気がいいです。

1時間近い休憩を2度挟んで、6時間近い長丁場。しかし全編に英雄の成長物語という明るさが漂い、とにかくパワフルで飽きさせない。「ワルキューレ」のメロディーが有名だけれど、「ジークフリート」が物語の核だという説もあるようです…

特にスーパーマンTシャツを着たタイトロールのジークフリートが、だだっ子、いたずら坊主のような造形で面白かった。演じるクリティアン・フランツは終盤になって、休養十分のブリュンヒルデと二重唱で対決する難しい役どころ。自分はほとんど出ずっぱりで圧倒的に不利なのに、すごい集中力でした! 07年にベルリン国立歌劇場来日公演でトリスタンを観ましたね。
対するブリュンヒルデのイレーネ・テオリンは前評判通り、貫禄のソプラノぶり。神々の権力欲やら抑圧やらを超越し、ちっぽけな人間という存在を中心にした、愛の世界に足を踏み出す。でも、行く手には破滅の予感が… 劇場特有の規模を生かした青空のスケールも大きく、盛り上がり十分でした~

キース・ウォーナーの「トーキョー」演出は相変わらず色鮮やかでポップ。何かを記録したフィルムをイメージさせる、斜めにかしいだ舞台とか、字幕のような謎めいた巨大文字に加えて、今回は1幕の「森の中の洞窟」にずらりと50年代風の家電が並んでいたりして、情報がぎっしり。2幕の「森の奥」はモーテルみたいだし。聴衆はいちいち考えさせられて忙しいです。

忙しいのはもちろん歌手陣も同じ。特にミーメは、1幕でばたばたと服を着替えたりしなければならないけど、ヴォルフガング・シュミットは性格俳優的な演技と達者な歌で、見応えがあった。2幕で着ぐるみ姿で空を飛ぶ、森の小鳥の安井陽子さんも頑張ってました! 昨年の「魔笛」の夜の女王も良かったけど、こういう愛らしい役柄が合っているんじゃないでしょうか。3幕初めのエルダ、シモーネ・シュレーダーは体中に文字を書かれちゃって、ちょっと気の毒だったけど… 後方の梯子を登ったり降りたりしてた妖精みたいな人たちも不思議で。情報過多の演出には異論もあるのでしょうが。いやー、満腹しました。

新国立劇場 オペラ「ジークフリート」 つるりんこの「いつもダラダラどこでもゴロゴロ」
ワーグナー「ジークフリート」@新国立劇場 TokyoClassic&旅のアルバム
ワーグナー 楽劇「ニーベルングの指環」第2日 楽劇「ジークフリート」 desire photo&art

スキマスイッチTOUR2010 ”ラグランジュポイント”

スキマスイッチTOUR2010 ”ラグランジュポイント”  2010年2月

冷たい雨のNHKホール。3階は初めて行ったかも。真ん中だけどさすがにステージは遠かった。二十歳前後の女性同士、カップルに子連れがちらほら。5775円。

映像や飛びモノはなし。シンプルな演出で、MCもそこそこに2時間45分、歌を聴かせる。大橋くんのやんちゃっぽいたたずまいが、深夜に友達と長電話しているような歌世界によくはまってた。力強いんだけど、だだっ子みたいで微笑ましいんだよね~。一方、裸足でキーボードに向かってボーカルを支える常田さんは武士の風格。
バックにもう一人キーボードがいて、さらにホーンの2人がキーボードやパーカッションもこなす。ステージ上にエンジニアがいたせいか、スタジオみたいな手堅い印象でした。

「藍」や「双星プロローグ」が格好良い。「ナナナ」大合唱の「虹のレシピ」も楽しかったね。ラグランジュポイントというタイトルにちなんだ、天体のストラップなんかを買いました。以下、来場者向けサイトで入手したセットリストです。

1、ラグランジュのテーマ~フィクション
2、ガラナ
3、雫
4、アカツキの詩
5、ムーンライトで行こう
6、レモネード
7、ためいき
8、マリンスノウ
9、Aアングル&Bアングル
10、8ミリメートル
11、藍
12、病院にいく
13、飲みに来ないか
14、双星プロローグ
15、デザイナーズマンション
16、ゴールデンタイムラバー
17、全力少年
18、SL19
19、虹のレシピ
~Encore~
20、光る
21、ただそれだけの風景
22、ふれて未来を

文楽「曾根崎心中」

第170回文楽公演 2010年2月

国立劇場小劇場。前のほうだけど左端で、ちょっと見づらかった。5700円。

楽しみにしていた吉田蓑助文化功労者顕彰記念の公演で、第三部を観る。プログラムに特別に絵はがきが付いていて、そこにスタンプを押しました。
演目は極めつけ近松「曾根崎心中」。もちろん、お初はかつて玉男さんとのコンビで当たり役となった蓑助さん。対する徳兵衛は弟子の桐竹勘十郎さんという、たまらない配役だ。去年、歌舞伎座で藤十郎さんのお初を観ているので、イヤホンガイドは無し。人形中心に観たけれど、三味線もよくきこえた気がします。

筋立ては歌舞伎に比べて脇役が少なく、九平次の悪事が露見するくだりもなくてシンプルな印象。その分、お初・徳兵衛の悲恋が際立つ。特に徳兵衛さんに寄り添って、その顔を一心に見上げるお初の幼くも官能的な仕草が、この上なく可愛らしい。心中シーンで打ち掛けを木の枝にかけたり、帯で体を結びつけたりする動きは、歌舞伎より派手かもしれないですね。

「生玉社前の段」は豊竹英大夫さん。「天満屋の段」で嶋大夫さんがたっぷり聞かせ、「天神森の段」はお初が津駒大夫さん、徳兵衛が文字久大夫さんで鶴澤寛治さんがびしっと締め、清志郎、龍爾、寛太郎さんらが盛り上げてました。面白かったです!Photo

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