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立川談春独演会 「おしくら」「鼠穴」

新春落語~立川談春独演会 2010年1月

久しぶりで楽しみにしていた談春さん。国立劇場小劇場。5000円。老若男女、客層は幅広い。

まず勢いよく出てきた前座は、お弟子の立川こはるさん。少年のようなきびきびした口調で、滑稽な「十徳」を一席。
続いて談春さんが登場し、こはるさんは女性だと説明して、苦言をひと言。それから立川流の説明やら、小劇場にちなんで落語研究会の歴史やらを語って「おしくら」へ。お伊勢参りの三人旅が、中山道に宿をとる軽い艶話。訛りが強い老婆のおかみ、早口の女中、旅の仲間の色男や気の良い与太郎と、キャラクターが粒だっていて、やっぱり巧い。

中入り後、歌舞伎座2日前にみた怖い夢のふりがあって、「鼠穴」。博打で田畑をとられ、越後から江戸にいる兄を頼ってきた竹次郎。こちらも訛りに味がある。兄にたった三文渡されて、悔しさのあまり一念発起。藁の「さんだらぼっち」から「さし」を作り、草履を作り、と努力する。蛤町で成功し、利息5両を持参して兄と再会、かつての仕打ちの真意を聞くところで、こらえきれず泣けました~。緩急の変化が上手なんだと思う。その後の、火事のスペクタクルから「夢は五臓の疲れ」までの、なんだか意味不明な展開は一気でしたね。やっぱり人間の「駄目さ」を演じるとピカいちだと感じます。マクラはちょっと理屈っぽい気もするけれど、それも個性なのかな。Photo

2009年喝采づくし

2009年は異様にたくさんの舞台、コンサートに足を運びました。

特筆すべきは「歌舞伎座さよなら公演」ということもあり、毎月のように頻繁に歌舞伎を観たこと。古典から現代風まで、そのサービス精神の幅広さに驚く。印象的だったのは、極め付き藤十郎さんの「曾根崎心中」、幻想的な玉三郎・海老蔵の「天守物語」、勘三郎が早変わりでみせた「怪談乳房榎」、幸四郎の弁慶、染五郎の義経、吉右衛門の富樫という顔合わせの大好きな「勧進帳」。さらには団十郎さんの家の芸「外郎売」、仁左衛門さんが色っぽかった「祇園一力茶屋の場」… 書いていたらきりがないなあ。

文楽では初体験が二つありました。一つ目は本場の国立文楽劇場に二日がかりで繰り出したことで、通し狂言「義経千本桜」をたっぷりと。二つ目は素浄瑠璃で、キング住大夫の「菅原伝授手習鑑 桜丸切腹の段」! キングには「伊賀越道中双六」沼津の段でも、至芸を堪能させて頂きました。文楽と歌舞伎は並行してみると、素人なりに理解が進むというか、相乗効果が大きいかも。

引き続きオペラも手は抜きません。ミラノスカラ座の「ドン・カルロ」、ガッティ指揮がよかった。なにしろルネ・パーペ、バルバラ・フリットリだもの。美しくも、考えさせる舞台でした。新国立劇場では、ついに長尺トーキョーリングに挑戦。音楽といいセットといい世界観といい、大迫力で、後半戦は2010年に続きます。超絶技巧の「チェネレントラ」や「魔笛」も、理屈抜きに楽しかった。

演劇をずいぶん観たのも、09年の収穫。先入観を覆した中井貴一、西岡徳馬の「十二人の怒れる男」や、森山未来が繊細だった「ネジと紙幣」、北大路欣也さんが威風堂々だった「フロスト/ニクソン」、そして雰囲気たっぷりの「マレーヒルの幻影」など。演劇の楽しさを知るのは、まだまだこれからっていう気もしてますが。

以上でもうお腹いっぱいですが、実はコンサートにもいっぱい行っちゃいました。とにかく名曲揃いで、存在感が圧倒的だった松任谷由実。思えば加藤和彦さんが出演した、前日の回だったんだよね。それからシンプルなのに求心力抜群だったMr.Children、上手くて、一生懸命さが伝わってきたコブクロ、文句なく楽しいゴスペラーズ。ライブはやっぱりアーティストが持つオーラで差がでるよね~。ユニコーンではつくづく、「バンドっていいなあ」と思った。忌野清志郎が亡くなった直後で、ライブ前後にRCがかかって聴衆が拍手していたのも印象的…

そういえばミュージカル「RENT」にも行きましたよ。ほかにもいろいろあったけど、もう書き切れません。インプット過剰で消化できていない気がしつつも、この勢いで2010年に突入します!

「東京月光魔曲」

シアターコクーン・オンレパートリー 東京月光魔曲 09年12月

09年の観劇納めはBunkamura20周年記念企画。作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ。S席2階中央で9500円。

昭和初期の東京を舞台に、江戸川乱歩とか横溝正史とかの探偵小説のような、妖しく、いかがわしい人間模様を描く。回り舞台での場面転換は、時にめまぐるしくて、時代と物語の混沌を象徴するよう。終盤で背景にかかる、巨大な月が印象的。

俳優陣は粒ぞろいだったんじゃないでしょうか。浮遊感がある瑛太、美しく罪深い松雪泰子、冴えない探偵の橋本さとし、きりっとした伊藤蘭さん、ナンセンスな小ネタをしっかり笑わせてくれるテンポの良い大倉孝二と犬山イヌコさん。それから、最初は純朴なのにどんどんやさぐれていくユースケ・サンタマリアは意外な説得力。歌もあったし。
ただ、ベテランも含めて全員が達者なぶん、気になる登場人物が多すぎるというか、どこに焦点を絞って見たらいいか、迷っちゃいましたね。あれ、それで結局、犯人は誰だったんだっけ。要するに、みんな松雪さんに夢中だったってこと? 誰か解説してよ…

 「東京月光魔曲」を見る 芝居遊歴控
「東京月光魔曲」 本日のお気に入り・演劇

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