歌舞伎「通し狂言仮名手本忠臣蔵」
歌舞伎座さよなら公演 吉例顔見世大歌舞伎 09年11月
歌舞伎座11月公演は定番「通し狂言仮名手本忠臣蔵」。その夜の部を観に行く。なんと1F桟敷席を初体験。花道側の西桟敷で1万8000円です。ドアを開けると小さいタタキがあり、靴箱らしきものと鏡。カーテンの向こうが掘り炬燵式の2人席になっている。狭いけれど、テーブルにお茶セットが用意されていてくつろげるし、劇場全体の雰囲気、観客の表情を横から眺められるのが面白い。役者さんが出てくると正面から照明があたるので、誰も観てないと思いつつ恥ずかしいのも一興。
まず五段目、六段目を2時間近い長丁場で。七段目までは08年10月に平成中村座で観ており、そのときは勘太郎の勘平、七之助のおかるという若々しい配役でした。
それに比べ今回、勘平は大御所菊五郎さん。「山崎街道鉄砲渡しの場」以下の暗闇の無言劇から、一転して「与市兵衛内勘平切腹の場」では派手な浅黄の紋服に着替え、大衆芸としての芝居っけたっぷりだなあ、と改めて思う。現代からすれば無茶で理不尽なストーリーをものともしない、存在の芯の強さというか。一方、お軽の時蔵さんはすらりとして端正。お才の芝翫さんが祇園の女将ながら、江戸風の気っぷが良い感じで、黙って座っていてもさすがの貫禄です。火縄や煙草など、やけに本物の火を使うのでドキドキ。終盤、背後に注文した食事が届く気配がしました。
30分の休憩でお寿司を食べ、コーヒーを飲みつつ、七段目の「祇園一力茶屋の場」。由良之助の仁左衛門さんはすらりとして軽みがあって、お軽とじゃらつくところなんか、なんとも色っぽい。わかっていても、駄目な遊び人にしかみえません。けれど耐えに耐え、最後にきて九太夫に対し怒りを爆発させるところは、激しさが前面に出てスカッとする。格好良いなあ。
一方の主役といえる寺岡平右衛門は、贅沢に幸四郎さん。こういう実直な役、似合うんじゃないでしょうか。じんと来ます。アクションがちょっと大変そうだったけど。お軽の福助さんはおきゃんな感じか。
短い休憩を挟み、大詰め十一段目。初めて観る「高家表門討入りの場」は、舞台いっぱいに浪士が勢揃いして壮観だ。「奥庭泉水の場」での、歌昇の小林平八郎と錦之助の竹森喜多八の立ち回りは予想以上にリアル。
そして本懐をとげ、明るい太鼓橋の向こうから仁左衛門さんらが登ってくる「引揚の場」は、スケールがあってすがすがしい。
ロビーに注意書きがあって、今回は橋を渡る演出にしたため、パンフにあった両国橋の設定を花水橋(永代橋)に修正したとのこと。当事者のブログを拝読すると、どんなに定番の演目でも、常に何か試みていることがよくわかって、感じ入ります。最後に馬で登場する、痛快な服部逸郎は梅玉さん。やっぱり引き揚げまで観ると大団円!という実感があって、これぞお芝居見物、でしたねえ。
やり遂げた感は抜群です 梅之芝居日記
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