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文楽「義経千本桜」 

国立文楽劇場 第114回公演=開場25周年記念 09年4月

初めての本場、国立文楽劇場に二日がかりで繰り出した。1日目は第二部で、前のほう9列左寄り。2日目に第一部で、通路を前にした10列の床に近い席。いずれも1等席5800円。今回の目的は、大阪で文楽を観るということと、「通し」というものを経験すること。

まず午後4時から、通し狂言「義経千本桜」の後半。1Fの展示を眺め、レストランで夕食を予約してから場内へ。歌舞伎座などよりゆったりしている。観客は若いカップルもいて幅広い。楽しみにしていた桐竹勘十郎さんの記念スタンプをパンフレットに捺す。始まる前から盛り上がるなあ。

三段目「椎の木の段」では人形が皆、黒子姿で登場し、椎の実をちまちま拾う姿がユーモラスだ。「小金吾討死の段」で幸助さんが登場するも、すぐに死んでしまってちょっと残念。内侍の豊竹つばさ大夫さんが、歯切れが良くて良い感じ。

休憩後、「すしやの段」でお待ちかねキング竹本住大夫さん登場。最近、転んで顔を打たれたらしく、痛々しいお姿で、こころなしか声も元気がないような。でも味わい深さは、さすがです。吉田蓑助さんが遣う娘お里が、やることなすこと、お茶目でなんとも可愛らしい。悲劇が高まる奥では、竹本千歳大夫さんがいつも通りの熱演。まさに滅びの美学というか、庶民であるいがみの権太の、一世一代の自己犠牲も、梶原景時、その裏にいて姿は見せない権力者、頼朝の深謀遠慮には勝てないというあたり、なんとも切ないお話だ。

四段目はがらりと雰囲気が変わり、満開の桜が華やかな「道行初音旅」。振れ幅の大きさに圧倒される。鶴澤寛治さんのリードで旅する、蓑助さんの静御前と勘十郎さんの忠信が美しい。人形も床も衣装が派手でサービス精神たっぷりだし、扇を投げるシーンも決まってましたね。
最後は「河連法眼館の段」で、豊竹嶋大夫さんが締める。心ならずも兄と対立してしまった義経の悲しさ。そして何といっても、勘十郎さんが縦横無尽の大活躍で、忠信と狐のたびたびの早変わり、鼓や木の陰からの飛び出しなど、目が離せない。最後は大がかりな場面転換があり、なんと圧巻の宙乗りで、上空から桜の花びらを撒き散らしてました。口あんぐり! 格好いいなあ。

二日目に11時から第一部を鑑賞。まず開場25周年の「寿式三番叟」。すがすがしい能舞台のしつらえで、なんと大夫がずらり7人も登場。竹本綱大夫さんが病気休演で、豊竹呂勢大夫さんが翁を語る。手前に三味線も同じく7人。これがすごく楽しかった! 席が床に近かったせいか、鶴澤清治さん筆頭に7人のリズムが響いてきて、のりのり。もちろん人形の三番叟、ユーモラスで弾けるような動きの勘十郎さんと、端正な玉女さんのコンビも明るくて気持ちが良かった。

休憩のあと、「義経千本桜」初段の切から。「堀川御所の段」は義経と川越太郎の行き詰まるやりとり、卿の君の自己犠牲と、またまた強引かつドラマチックな展開。それにつけても弁慶があきれるほど短絡的で、このへんは勧進帳などの造形と違っていて面白い。
二段目「伏見稲荷の段」では、勘十郎さんが早くも忠信で狐の仕草をしており、昨日観た後半とのつながりがよくわかった。

そしていよいよ「渡海屋・大物浦の段」。能の「船弁慶」に似た設定だけど、こちらは平知盛が亡霊ではなく生きて潜伏していて、義経一行を狙うというスリリングなストーリー。豊竹咲甫大夫さんがなかなか明朗に語り、最後は切場語りに昇格した豊竹咲大夫さんがしっかり締めます。
お話は、やはり滅びの美学という印象が強く、吉田文雀さんの典侍局が覚悟を決め、幼いながらも賢い安徳天皇を抱いてしずしずと海に向かうシーンがなんとも哀しい。敵であっても助けるべきは助ける、という義経の英断が、わずかな救いを感じさせる。昨日に負けず劣らず場面転換が大がかりで、特に海の場面が雄大。ラストで玉女さんの知盛が、大碇の綱を体に巻き付けて後ろへばったりと倒れ込むと、客席は大拍手でした。

いやー、観どころ聴きどころが満載。さすがに少々くたびれたけど、文楽三昧で満喫しました。

4月文楽公演 歌季句気呼
4月文楽公演 別無工夫

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