その男
その男 09年4月
東京芸術劇場中ホール、S席1万1000円。前から3列目左側で舞台が目の前でした。初めての劇場だったが、ロビーがガラス張りで明るく、席もゆったりしていていい感じ。
お話は池波正太郎原作の時代劇。激動の幕末を中心に最後は2・26事件まで、主役になれない焦燥を抱えつつ、歴史の目撃者として生きる男の生涯を描く。鈴木聡脚本、ラサール石井演出。客席は主演の上川さんファンらしい女性が圧倒的で、各幕の登場シーンでは必ず拍手がくるのにびっくり。笑えるシーンも多く、大衆演劇の雰囲気。
休憩2回をはさんで3時間45分ほどと、結構長かった。平凡に生きることの、本当の強さを描くストーリーは大人っぽく味わい深いものだけれど、あまり緊張しないで、テレビドラマを観るような気楽さを感じた。木のセットを動かして、頻繁に場面転換する構成のせいか。
上川隆也は舞台袖の小さい花道に来ても顔がびっくりするほど小さく、声がよく通って、やっぱり圧倒的に格好いい。ひとりだけ、いつも目がきらきらしているし。爽やかすぎるくらいかな。それから加藤照男さんを中心に、殺陣の迫力を間近に観たのが収穫。
キムラ緑子、平幹二朗はさすがの貫禄。ユーモラスな池田成志さんは、薩摩弁が大変そうで、ちょっと噛んで笑いかけるシーンもあったけど、演技のやや大仰なところが舞台らしかったかも。内山理名が案外、無理なくはまっていた。