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アーネム・フィルハーモニー

オランダ・アーネム・フィルハーモニー管弦楽団  09年3月

サントリーホール大ホールの2階左端。オーケストラを上からのぞき込む感じで、動きがよく見えて面白い。オランダ大使館関係者らしき人もいて、なかなか華やかな雰囲気。

指揮小林研一郎、ピアノ中村紘子。共に60歳をゆうに超えるベテランだけど、エネルギッシュです。特にコバケン。初めて観たけど、評判通り踊りまくり、唸りまくり。オケも力いっぱい、一生懸命でした。

ケース・オルタウスの日蘭貿易400周年記念作品「地蔵」は、日本風の打楽器が印象的。グリーグのピアノ協奏曲イ短調は気持ちよい。休憩後、ムソルグスキーの組曲展覧会の絵、ラヴェル編。馴染みのメロディーが楽しく、ドラマチック。管で頼りないところもあったと思うけど、サックスの女性が格好良かった。
アンコールはまず、弦だけのダニーボーイでしみじみ。これはコバケンの定番なのですね。さらにハンガリー舞曲5番を情熱的に仕上げ、最後は拍手にこたえて4方向に丁寧なお辞儀。サービス精神たっぷりでした。

蜻蛉峠

いのうえ歌舞伎☆壊(Punk)「蜻蛉峠」  2009年3月

劇団☆新感線2009春興行。赤坂ACTシアター。1F右後方、1万1000円。

宮藤官九郎作、いのうえひでのり演出。古田新太、堤真一、高岡早紀。寂れた宿場町でのケチな抗争、そして25年前の凄惨な事件の真相を描く時代劇。

人気劇団の公演に行ってみる。若い女性が多いのに、まず驚く。実際、ギャグや着ぐるみ、物まね歌謡ショーといった下世話なサービスがたっぷり。それを観客が待ちかまえている感じで、ファンの熱心ぶりがよくわかった。

社会背景への目配りは、さすがのクドカン節だ。終盤で、重要なシーンを巻き戻して謎解きしてみせる仕掛けも期待通り。場面転換がけっこう複雑だけど、紗幕に投影した映像を、後方の人物や装置に重ねていく緻密な構成がうまい。
もっとも、個人的には登場人物やギャグは多すぎる。ちょうど人物それぞれの情念が盛り上がるな、と思うと、ロックの大音響でかき消される感じで、そのへんは物足りなかったかな。

殺陣にスピード感があり、俳優陣の色気はさすがです。特に堤真一の着流し立ち姿。それでも、まだまだ控え目にしている印象があって、古田新太をたてているのかも。この人の別の舞台を観てみたい。上川隆也との対決とか。若手の勝地涼、木村了の「Wリョウ」も頑張っていた。

蜻蛉峠プレビュー 日々これ日常

ラインの黄金

ラインの黄金  09年3月

いよいよリヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニューベルングの指輪」序夜に挑戦した。新国立劇場。S席1階2万3625円。

キース・ウォーナー演出、2001年「トーキョーリング」の再演。気鋭ダン・エッティンガー指揮、東フィル。休憩がないので上演前にピットを見に行くと、楽器がぎっしり並び、ハープも4台ほどがずらり。かなりの迫力だ。

拍手なくスタートして、それから2時間40分ぶっ続け。さすがに少しくたびれたものの、愛情と権力の葛藤、愚かな為政者と抑圧された働き手など、イメージが豊富な作品で楽しめた。空間に斜めに浮いたような舞台装置は、不安をかき立てるし、要所要所に使われる光も刺激的。血なまぐさいシーンの演出には胸がざわざわした。そして鮮やかな場面転換後、ラストシーンの真っ白な背景に浮かぶキャンディーのような色彩と、神々のコミカルな感じが醸し出す違和感。

飛び抜けた歌手はいなかったように思うけれど、ヴォータンのユッカ・ラジライネン、ローゲのトーマス・ズンネガルド、アルベリヒのユルゲン・リンらは不安なし。ちょっとだけ登場するエルダのシモーネ・シュレーダーに存在感がある。ミーメの高橋淳さんが拍手を浴びてましたね。

ワーグナー「ラインの黄金」新国立劇場  雑記帳
新国立劇場「ラインの黄金」(2009/3/15)  音楽の都

立川談志一門会 「長短」「薄型テレビ算」「堪忍袋」「つるつる」

立川談志一門会 09年2月

練馬文化センター大ホール。S席、2Fの前の方。4000円。

大ホールが満席の盛況。以前の同じ練馬文化センターでの一門会に比べ、客層が若い感じがする。家元復活の期待からか。

まず若い立川談修さんが、コンパクトに「長短」。気の長い男と短い男の珍妙なやりとりは、歯切れが良くて聞きやすい。終わって脈絡なく、江戸端唄「茄子と南瓜」を踊ってびっくり。これは家元の演目につなげる振りだったのかなあ。
続いて立川談笑さんの「薄型テレビ算」。古典の「壷算」を現代風に改変したもの。そもそも元になっている一種の詐欺話がとても巧妙だし、騙し騙されのテンポがよく、気持ちよく笑った。
そして柳亭市馬さんの「堪忍袋」。小さん門下だから兄弟弟子の縁ということかな。声がよく、力を抜いた感じが達者。お得意の歌も一節。

中入り後、元ザ・ニュースペーパーの松元ヒロさんがスタンダップ・コメディ。出演者それぞれ中川財務相の辞任をネタにするなか、麻生首相の物まねも含めて、テレビに出ない毒舌をたっぷりと。

そして、いよいよ談志さん。最初に意味不明のパントマイムがあって、小話をいくつか。病気からの復帰と、騒がれるのに照れているみたい。確かに広い会場全体が、緊張して迎える感じだったものな。
ネタは30年ぶりとも言われる「つるつる」。幇間が好きな芸者と会う約束をしたのに、新橋のお座敷で引き留められる話。途中で非常ベルのような音が鳴り出すハプニング。高座をじゃまする落語協会の仕業か、などとぶつぶつ笑わせながら、何とか続行。その後、客席携帯電話の音もあったけど、あえて無視してました。噺は変わらず味わい深かったけれど、幇間のはじけた感じを出すには、残念ながら声の張りが今ひとつ。それをあえて演じてみせて、枯れないところを示すのが意地なのだろうか。終わって、何はともあれ一席やれたことに意味があると、またぶつぶつ言いながら小話をいくつか。いやー、観られて良かった。

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