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文楽「女殺油地獄」

第166回文楽公演 第3部「女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」 09年2月

2週連続で国立劇場小劇場。15列の中央、1等席5700円。今回は18時30分開演。

楽しみにしていた演目。今日も客層は幅広く、満員御礼だ。ロビーでは人物相関図などを載せたパンフレット「近松が描いた上方②」も配られ、理解が進む。

徳庵堤の段は浮き浮きした野崎参りの道筋の茶店のシーンで、与兵衛と伯父が偶然会ったり、あどけない少女のセリフがあったりして明るい。大夫も役柄ごとにずらりと並んで賑やかだ。後の悲劇への伏線がきいている。桐竹勘十郎さんが遣う与兵衛の歩き方など、いきがる感じがうまい。
続く河内屋内の段では、複雑な親子関係が泣かせる。吉田幸助さんの稲荷法印がちょっとコミカルだが、後半は甘やかされた与兵衛がどんどんワルになっていき、その暴れぶりが非常に現代的。豊竹呂勢大夫さんはいかにも若いけど、人間国宝、鶴澤清治さんが支えます。

20分の休憩を挟み、いよいよ手島屋油店の段。豊竹咲大夫さんに大向こうから声がかかり、いやがおうにも盛り上がる。まず不吉な前兆があり、親の人情が切々と描かれ、ついに与兵衛登場。どうしようもない甘えた姿勢が本当に情けない。ついに殺しの場面になると、髪や帯を振り乱し、油に滑るシーンの動きも素早く、予想以上に激しい展開に驚く。
舞台上が暗くなり、幼子が寝ている蚊帳に手をかけて息絶える、桐竹紋寿さんのお吉さんがあまりに哀れ。人形だけ残して人形遣いが立ち去ってしまうところも、残酷でリアルだ。途中、与兵衛が柱に寄りかかり、肩で息をするシーンや、最後に盗んだ金を取り落とし、震えながら拾う仕草なども、目が離せない。さすがの勘十郎さんも、ちょっと表情が変わってたような。
いやー、大迫力で堪能しました。

2月文楽公演(第三部)@国立劇場小劇場2009.02.11 DANGO-JIRU HYPER

「コルテオ」

ダイハツ「コルテオ」東京公演 09年2月

シルク・ドゥ・ソレイユ創設25周年特別企画。ダニエル・フィンジ・パスカ演出。原宿新ビッグトップ。B5列。13000円。

国立代々木競技場の中の特設ステージ。30分前に着いて、シャンデリアがさがるロビーでお気に入りのボールペンやTシャツ、飲み物を買い、うきうき。年齢層は幅広い。
360度円形劇場は客席3000というが小さめに感じられ、ステージがとても近い。32メートルのステージを挟むように席が並んでいる。高さ12メートルの、水彩画のカーテンが素敵。
コルテオとは行列の意味だそうです。最期を迎えたクラウンが、夢の中でこれまでの人生、恋愛や友情を思い出し、仲間たちに見送られて旅立つというストーリー。
驚異的なシャンデリア、シル・ホイール、タイトロープやブランコのない空中ブランコのパラダイス、ラダーなどの人間離れした技は期待通り。リズミカルなバウンシング・ベッド、シーソーを使ったティーターボード、お楽しみ浮遊感満載のデュオ・ストラップ、手に汗握る箱形鉄棒ツアーニクなど、珍しい演目もテンポ良く続く。パンフレットを参照すると、一部パフォーマンスが省略されていたようだけど、30分の休憩を挟んで2時間半を満喫。
客席の頭上を漂うヘリウムダンスや、小さい男女のクラウンが寸劇を演じるテアトロ・インティモは大道芸の雰囲気が色濃い。基本はイタリア語だけど、日本人キャストの奥沢秀人さんが日本語を交えるので、全体にわかりやすい。その分、昨年初めて観た「ZED」に比べると、幻想的なスケール感は少なめ。とはいえ、やっぱり大興奮で、最後のほうは暑いくらいでした。Photo

文楽「敵討襤褸錦」

第166回文楽公演 第2部敵討襤褸錦(かたきうちつづれのにしき) 09年2月

国立劇場小劇場。15列左のほう。5700円。

吉田玉女さんの解説を聴いてから鑑賞。まだわずかな回数しか足を運んでいませんが、なんだか若い女性が増えてきた感じがする。実はブームなのか?

備後入江の武士、助大夫の次男、次郎右衛門と三男、新七による父の敵討ち談。18年ぶりの上演という珍しい演目だそうです。素人目には人形の動きが少なく、地味な印象。それだけに舞台上の細かい動きや、大夫の腕のみせどころかもしれません。

文字久大夫さんが病気休演で、咲甫大夫さんが代わり役を務め、大活躍。でもちょっと朗々としすぎかなぁ。「春藤屋敷出立の段」の前半は、明るい恋物語で笑えるけれど、後半では蓑助さんがちょっとネジがはずれた長男、助太郎を遣い、落ち着きのない動きをきめ細かく表現し、あわれを誘う。後半、兄弟を仇討ちに送り出すにあたって、母や許嫁が現代感覚ではおよそ現実離れした犠牲精神を発揮するけど、文楽だとあまり疑問に感じないのは、いつもながら不思議。嶋大夫さんが渋いです。

休憩をはさんで別名「目利き」といわれる「郡山八幡の段」は、人形さんがみな顔を出さない黒衣で登場。次につながる説明調の内容だからか。千歳大夫さんもいつもよりちょっと抑えめな感じ。
続く「大安寺堤の段」で、お待ちかね、キング住大夫師匠が登場。玉女さんが遣う、敵を求めて放浪し、ぼろぼろになった次郎右衛門の、笑うシーンが圧巻ですね。勘十郎さんも、兄弟を助ける格好いい高市宇田右衛門役で締めます。最後は派手な立ち回りがあり、見栄をきって幕。

切り場語りにだけ白湯が出され、弟子が床の側で控えていて、これが勉強になるということを初めて知りました。住大夫師匠のサインもゲットし、大満足。

情の風華の舞 竹本座豊竹座の競演「敵討襤褸錦(かたきうちつづれのにしき)」  心にいつも文楽を

「リチャード三世」

リチャード三世 09年1月

パルコプロデュース公演、翻訳三神勲、演出いのうえひでのり。赤坂ACTシアター、1F後方右寄りのS席1万円。

タイトロールに古田新太、アンに安田成美、スタンリー卿に榎木孝明。1部2時間弱、20分の休憩を挟んで2部1時間ほどの長丁場。セリフも多い。しかしスタイリッシュな映像とニュース中継、チャット、携帯電話なの小道具での説明がたっぷりで、大音響のロックも駆使し、それほど長く感じない。観客は幅広いが、劇団☆新感線ファンなのか、若い女性がやや多め。

その分、本筋であるリチャード三世の悪漢ぶりとか、残忍さとか、彼を突き動かす衝動とかの印象が、予想していたより薄くなった気がした。会話によって知らず知らずアンやエリザベスを陥れてしまうところあたりは見せるんだけど、古田新太はハンバーガーをぱくついたりする稚気を出す一方、怪しさは案外控えめ。ヘンリー六世の未亡人、マーガレットの銀粉蝶のセリフ回し、存在感が際立って、女同士の掛け合いが印象的だったと思う。

リチャード三世http://woofc2.blog33.fc2.com/blog-entry-244.html Therter moe
【リチャード三世@赤坂ACT】   猫棒【悪】猫ブログ

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