立川談春独演会 「大工調べ」「文七元結」
立川談春独演会 08年12月
読売ホール。二階F列。3500円。
「赤めだか」を読み、楽しみにしていた独演会。この日はまず「大工調べ」。棟梁と与太郎が大家のところへ怒鳴り込むくだりまで。与太郎の駄目さ加減のおかしさと共に、談春さん自身も何か別のことを考えながら話しているような、奇妙な感じがある。しかし、棟梁と大家が売り言葉に買い言葉で、互いに怒りがふつふつとわき上がるシーンが、もの凄くリアルで、見ていて怖くなるほど。やっぱりたいした演技力だなあ。立て板に水の、江戸っ子啖呵も聞かせます。
談春さんが引っ込むと、メクリにスペシャルゲスト、月亭可朝さんの名が出て、会場がどよめくなか、カンカン帽でご本人登場。「世帯念仏」だけど、ストーカー容疑で略式命令を受けた話が長くなり、漫談調。その後、談春さんが加わって対談になる。この顔合わせだけに、当然のごとくギャンブルの話題。可朝さんは「芸の肥やし」になるなどという都合のいい解釈は真っ向から否定、「とにかくこれほど面白いモノはない、薬物以上だ」、とどんどん危ない方向に流れていく。可朝さんの強烈なキャラクターと、それをかわしつつ受け止める談春さんが立川流らしくて、面白すぎ。
中入り後、お待ちかね年末らしい「文七元結」。前半の「大工調べ」に続いて、駄目なやつなんだけど腕はいい職人のお話ですね。もちろん人情話なんだけど、佐野槌(さのづち)の女将と番頭さんの造形が秀逸。決して日向の存在でない人物の怪しさ、凄みが真に迫っている。緩急のめりはりがうまいのかなあ。見せ場の長兵衛が文七に五十両あげちゃうところも、単に逡巡するというより、せっかく腕があるのに真面目に働かずにきた自分に自分で腹を立てる、もどかしいような複雑な心理が、なんとも切ない。
帰って志ん朝さんのDVDで、同じ演目を観たら、結構あっさりした味わい。談春さんはこってりしているのが、持ち味ですねー。笑って泣いて手締めをして、堪能しました!(2008・12)
お他人様の子でも救ったって 昔の江戸っ子はえれえなあ 立川談春 独演会〈読売ホール) 梟通信
読売ホールにて立川談春独演会を見る 余計な日常・余計なもの思い
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TBありがとう。
ビクター落語会にはいきましたか?
私は昼夜ぶっ通しでがんばりました。
好いメンバーですね。
投稿: 佐平次 | 2008/12/23 22:13