「夏祭浪花鑑」
「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」 08年6月
渋谷でコクーン歌舞伎。13000円。2階の最前列。演出・美術串田和美のドイツ・ルーマニア凱旋公演。団七に勘三郎、徳兵衛に橋之助、お辰に勘太郎。
劇場入り口に大阪名物「くいだおれ人形」が立ち、ホールでは席に持ち込める草餅セットなどを売っていて、芝居小屋の雰囲気たっぷり。客席も1F前方は床に座布団を敷き詰めてある。客層は老若男女幅広い。「はい、幕開け」という合図はなく、祭り見物の風情の役者さんたちが客席を歩き始めて幕開けとなる趣向。観客のすぐ隣にすわりこんだりして、のっけからわくわくさせる。
テーマはタイトル通り夏祭り。任侠の話だから、全編喧嘩に啖呵と威勢がいい。序幕は三婦の彌十郎がコミカル。釣船三婦内の場では、勘太郎が火傷を負うシーンでりりしい色気と存在感を示し、次の殺しの場面へとつながる熱さ、血なまぐささを漂わせる。
そしていよいよ、序幕第4場・長町裏の場。1Fの客席に水よけのケープが配られ、団七と笹野高史の義平次が、ろうそくの明かりのなか、泥水を飛ばし、鬼気迫る立ち回りをみせる。人間のダークサイドが極に達したとき、一転舞台が明るくなって男衆が陽気に踊り出る。この展開は評判通りの圧巻で、胸に「どすん」と来た。祭りという非日常が、思いあまるととんでもないことをしでかす人間の「魔性」を露わにする。
休憩を挟んで二幕目は、色っぽい扇雀演じるお梶の人情話から、クライマックスの怒濤の捕り物へとなだれこむ。鳴り物、和太鼓が騒々しく盛り上がり、ミニチュアの町並みのセットや客席での梯子を使った火消し風など、アクションがたっぷり。最後は奥の大道具搬入口が開いてパトカーが飛び込んでくる。絶望と高揚がないまぜのラストは、完全に「明日に向って撃て!」になってましたね。
いやー、楽しかった。演出は盛りだくさんだけど、形の綺麗さが貫かれて、ちゃんと歌舞伎を観た、という感じがしました。代官でも出ていた勘太郎が良かったです。
コクーン歌舞伎 夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ) へたれ日記
平成20年6月「コクーン歌舞伎 夏祭浪花鑑」 n keipanda?