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「こうもり」

「こうもり」  2008年5月

ウィーン・フォルクスオーパー日本公演で、「こうもり」を観る。東京文化会館、1Fの招待席のすぐ右後ろといういい席でした。海外オペラの引っ越し公演としては抑えめの3万9000円。

ヨハン・シュトラウス作曲、レオポルト・ハーガー指揮。オペレッタ初体験だったけれど、明るいワルツのオケ、満載のギャグがのりのりで、また歌手がみな芸達者で、からっと楽しめた。
のっけから序曲で一度オケが立ち上がり、拍手を受け、いつものオペラとはだいぶ違うくだけた雰囲気。2幕目のでまかせフランス語の掛け合いあたりから、観客が遠慮無く笑い始め、3幕目に至っては、カレンダーをめくると12月32日になったり、壁に掛けた帽子が何度も落ちたり、もう古典的なドタバタ劇。後ろの席の男性が笑い過ぎて、「はあっ」て疲れてましたよ。

奥方ロザリンデ役のエディット・リ-ンバッハー、たくましい小間使いアデーレのアンドレア・ボグナーが姿も美しく、歌を聞かせ、姉イーダのアルテイナ・ドラークはバレエも上手。
大人気だったのは、退廃的なオルロフスキー公爵のカウンターテナー、ヨッヘン・コワルスキー。出てきただけで拍手、というのも初めてみたかも。お付きのイワンとの仲をにおわせる演出が怪しい。自信たっぷりに舞台を仕切るスターの貫禄を感じました。
演出を兼務し、酔っぱらい看守フロッシュを演じたハインツ・ツェドニクは、とにかく喜劇役者に徹していた。恋人で脳天気な声楽教師、アルフレート役のルネ・コロは、さすがに70歳という感じでしたが。意外と、仕掛け人「こうもり」ファルケ博士のマティアス・ハウスマンへの拍手が多かったかな。

東京文化会館は2度目。2幕のあとの休憩で、座ってシャンパンを飲んで快適でした。

こうもり(ウィーン・フォルクスオーパー・東京文化会館・上野)  道楽ねずみ

文楽「鎌倉三代記」「増補大江山」

5月文楽公演 08年5月

雨の中、国立劇場小劇場。1等席6500円。

文楽初体験。連れて行ってくれた人によると、5回観るとわかっ
てくる、とのこと。まずはイヤホンガイドで学びながらの鑑賞で
すが、字幕も出るし、床がくるくる回っていろんな人が演奏する
し、意外に派手で面白い、というのが第一印象でした。

演目はまず時代物で「鎌倉三代記」。入墨の段は吉田勘弥さん
の妻篝火が端正。大阪弁がリズミカルだ。
25分の休憩中にお弁当を食べ、続いて局使者の段。米洗ひの段
は桐竹紋寿さんが、終始生真面目な顔でコミカルな女房おらちを
遣うのが面白い。
がらりと雰囲気が変わって三浦之助母別れの段は竹本千歳大夫
さんが表情豊か、汗だくになって語ってくれる。オペラとはまた
違う音楽劇だなあと、思っていたら、最後に高綱物語の段では
桐竹勘十郎さんの三浦之助ら複雑に人間関係が入り組み、最後
には背景が変わって、木に登るアクティブなシーンもあって、
いろんな要素を楽しめた。

短い休憩のあと「増補大江山」戻り橋の段。こちらは幻想的な演
目で、京の橋の上に月が光ったり、鬼女と渡辺綱が夜空に舞って
稲妻が走ったり、スペクタクルな演出。吉田清之助さんが連獅子
のように若菜の髪を振るとやんやの喝采でした。人間国宝、鶴澤
寛治さんはじめ三味線、大夫も人数が多くて迫力があった。

終了後、伝統芸能情報館に移って特別に桐竹勘十郎さんのお話を
聞く。人形の仕組み、そこに命を吹き込む技の一端など、初心者
向けにお話くださり、楽しかった。人形遣いはたった37人とか。
びっくり。有り難うございました!


文楽5月公演 和のこころ

「どん底」

「どん底」  08年4月

シアターコクーン。9000円。ゴーリキー作、上演台本・演出はケラリーノ・サンドロヴィッチ。

ケラさん初体験。「どん底」という演目は遠い昔の高校時代、学園祭の演劇部が上演したのを観たことがある。なんだか大人っぽくて、格好良く、校内で評判だったことしか覚えていないのだけど、見ていてちょっと懐かしい、不思議な気分だった。

乾いた笑いを交えつつ、人生の「どうにもならなさ」を描く。ロシア文学とか、思想とかバックグラウンドの知識が乏しいのだけれど、それをあまり意識しないで観ることができた。それは、原作の骨太さのおかげなのか、翻案の妙なのか。2幕目で、ごうごうと降りしきる雪の非日常性に気分が盛り上がったあと、舞台がせり上がって、相変わらずのごちゃごちゃした安下宿屋が現れる。その「がっかり感」が印象的だった。

全体には、ルカー役の段田安則さんの舞台、という印象でした。変わった 声の持ち主だと思うんだけど、舞台ではそれが存在感になっている感じ。年寄り役が板に付いていて、それでいて「かつては相当悪かった」ふうを醸しだす。登場人物にいたずらに希望を振りまき、最後にはフルートまで吹いていた。芸達者だなあ。マギーさんらほかの出演者も面白かったけど、江口洋介さんが外見の割に怪しさ、危うさが薄く、物足りなかったかなー…

 『どん底』 上演台本・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ  ペンギンはブログを見ない

 『どん底』 [演劇・本]  柴犬陸ブログ

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