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「十二夜」

「十二夜」 2007年7月

7月大歌舞伎「十二夜」の初日。蜷川幸雄が演出したシェイクスピア劇歌舞伎版の再演だ。一等一万6000円。
年配の女性連れが多く、着物姿が目立つ。狭い 廊下で佃煮、鯛焼きから洋服まで売っているざわざわした劇場の雰囲気、幕間に桟敷で一斉にお弁当を広げる光景がなかなか楽しい。

筋立ては誤解が招く恋のもつれや、堅物に仕掛ける偽恋文の悪ふざけなど、オペラにも通じるいわばコメディの原型。だじゃれが多くて、客席は笑いが絶えず、屈託なく楽しめた。

演出は鏡を多用し、客席や役者の背中をあえて見せることで、人間の二面性を表現。金井勇一郎の装置は冒頭の桜、難破シーンの船と波、庭の百合など横長の舞台を目一杯使って美しい。衣装も全員、金箔などを散りばめてとても華やかだった。

役 者はやはり女形の琵琶姫、その男装姿である獅子丸を演じた菊之助がきれいだった。難破シーンの早変わり、二幕冒頭の踊りなど見せ場も多い。官僚だけれどか らかわれて間抜けな坊太夫、道化だけれど実は賢い捨助を演じた菊五郎も貫禄があってうまい。悪女の腰元の亀治郎、姫の叔父の左団次、小柄で陽気な英竹の翫 雀がテンポよく、のびのびしていた。

しっとりした恋の場面で流れる洋風音楽も意外にしっくりし、話題だった大詰めの吹き替えの仮面もさほど気にならなかった。決闘シーンの後、やや繰り返しが多い気がしたのと、カーテンコールがなかったのが、歌舞伎はそういうものだと思ってもちょっと残念。

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