ミュンヘンオペラ「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 2005年10月
NHKホールで。バイエルン国立歌劇場。3幕。指揮ズービン・メータ、演出トーマス・ラングホフ。ザックスはヤン=ヘンドリク・ロータリング。
年2回くらいオペラを観る贅沢を始めて3年ぐらい。ついにワーグナーを初体験した。かなり身構えていったけれど、ワーグナーのほとんど唯一の喜劇ということで、しかも非常に現代的な演出だったので、全く飽きずに楽しめた。
前奏曲からシンバルが鳴る重厚さ。歌手よりもオケがよかったかも。歌に聞き入るよりも、内容や対話に目がいってしまうからか。それほど内容が衝撃的だということ。
そもそも主人公ザックスが若い騎士の存在に諦念しつつ、伝統的な国民精神を歌い上げるという政治的な内容で、聴き終わって朗らかに席を立てる感じではない。加えて携帯やパソコン、巨大なモニターなどが登場する演出で、特に舞台上の論争をカメラで中継してみせるところ、終幕で負けたはずのベックメッサーにスポットライトが当たるところが印象的。
私たちがメディアを通した虚像で、すべてをわかったつもりになっていること、しかし結局、そのメディアが勝ちをおさめているという意味だろうか。オペラという形式で非常にいろいろなことを考えさせる、面白い舞台だった。