「シンプル族の反乱」
つまり、日本人は今、戦後的な、あるいは1970年代以降の、「共同体の束縛からの解放」「個人の自由の最大化」という歩みを少しゆるめて、個人の自由を担保しつつも、一定の共同体に所属して安心を得たいと思い始めていると言うことができるだろう。
「シンプル族の反乱」三浦展著(KKベストセラーズ) ISBN: 9784584131817
これまで郊外家族の生態や、「下流社会」の現状を鋭くとらえてきたマーケッターが、昨今話題の「ものを買わない若年層」の意識を探る。
あっという間に読めて、久しぶりにスカッとした。最近の消費論とか若者論には個人的に、どうも隔靴掻痒の印象をもっていた。「ロハス」というときれいごとに聞こえるし、「草食系」だと頼りないばかりで、どうも夢がない。それって「生活のベースはもう十分豊かだけど、足もとは不況だからしばらく引きこもっていよう」ってことなのだろうか。んー、そうじゃない、何か意識が変わっている…。そんなモヤモヤに答えてくれる一冊だ。
著者はまず、ロハスブームに隠れてあまり定着しなかった米社会学者の2000年の著書名「カルチュラル・クリエイティブス」(ポール・レイ、シェリー・アンダーソン著)に注目する。そこで描かれたのは、成功やブランド品は求めないけれど、充実した人間関係とか読書、世界遺産を訪ね歩く旅には関心をもつ、という姿勢だ。なにより面白いのは「未来に対して楽観的」という点ではないだろうか。私有意識が低くてアンティーク好きだから、確かにあまり買い物はしない。けれど決して、きれいごととか引きこもりではないのだ。何らかのストーリー性、説得力があるモノやサービスには、けっこう弱かったりする。
著者はこの消費者像を現在の日本に移し、シンプル族と名付けた。あてはまるのは主に1970年代前半に生まれた団塊ジュニア以下の世代。人づきあい(ソーシャルキャピタル)志向とか、「地方」に対する感覚の変化といった指摘が、なるほど、と思わせる。ちょっと癪なのは、台頭するシンプル族との対比で言及される、思考回路が古いモダン族の生態だ。これが、いちいち自分に当てはまるんだな。んー、シンプル族に今までピンとこなかったのも、致し方ないか。
著者はもちろん、若年層が全員シンプル族というわけではないし、ライフスタイルが100%シンプル族という人も存在しない、と断ったうえで、モノやサービスを売る側がシンプル族にどう接すべきか、という点に言及している。ほかの近著に比べ、全体にデータより著者の直感を重視していて、かえって理解しやすい気がした。(2009・7)
2009-7-23 シンプル族の反乱 本屋のほんね
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