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April 12, 2026

ユニクロ

社長室があるという最上階まで階段で上っていくと、目に飛び込んできた光景にあっけに取られた。
 30坪ほどのフロアに置かれた大きな執務机を取り囲むように、壁いっぱいに本が並んでいた。

「ユニクロ」杉本貴司著(日経BP)

すたれゆく石炭の町の商店街、家族経営の紳士服店。ありふれた零細企業と、東京でふらふらしていた跡取り息子が、いかにしてアパレルビジネスを革新し、3兆円規模のグローバル企業へと駆け上がっていったか。
柳井正という希代の経営者の発想とガッツ、500ページ近い関係者への膨大な取材量に圧倒される。とはいえ本書を読み通しても、成功の源がいったい何なのかは、それほどわかりやすくない。柳井はぶっきらぼうで厳しくて内省的。決してカリスマとは思えないし、成長軌道に乗ってからも海外展開、労務問題などでたびたび躓いちゃう。

印象的なのは会計士、安本隆晴が語る初対面シーンだ。1990年、電話で上場指導を依頼され、無名だけどいちおう実在しているらしい、久しぶりに飛行機に乗るかと、軽い気持ちで柳井と面談して圧倒される。世界の企業経営を熱心に研究し、「1997年に日本を代表するファッション企業になる」と断言。安本もそれを絵空事と思わず、真正面から受け止めたのだから慧眼だ。メーン地銀との衝突など、はらはらする局面を乗り越えて上場を果たし、監査役として長く伴走することになる。
柚木治のストーリーも興味深い。伊藤忠商事での油田開発といった華やかな経歴をひっさげて1999年に入社。自信満々に野菜販売を提案して大失敗する。辞表を出すと柳井は激昂するでもなく淡々と、26億円も損してお先に失礼しますはないでしょと、幹部100人の前での説明を求める。まさに針のむしろだが、そこからダメな自分を受け入れて傲慢や絶望を脱し、GU再建を託されていく。失敗した柚木君のほうがいい、10倍返しじゃなく100倍返ししろと。

決してマニュアルとして真似できる経営指南ではないだろう。それでも、いずれかの一節が次世代の心に残るならと、ちょっと明るい気持ちになる1冊だ。お馴染み佐藤可士和のロゴの装丁がお洒落。(2026.4)

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