哲学と宗教全史
人間の問いに答えてきたのは、昔は宗教がほとんどでした。それから哲学が台頭してきて、やがて自然科学が生まれ、生物としての人間についてほとんどすべてを説明できるようになりました。それでもまだ自然科学は万能ではなさそうです。哲学や宗教は、今、そのような地平に到達しています。
「哲学と宗教全史」出口治明著(ダイヤモンド社)
お馴染み博覧強記の著者が、紀元前1000年のゾロアスター教から20世紀のストロースまでを解説する。平易な記述で一気読みだ。商人ムハンマドが開いたイスラーム教の合理性、宗教のとしての若さや布教しやすさの指摘などが興味深い。項目ごとに参考文献を数冊勧めていて、これをすべて読破しているのかと改めて驚愕する。
450ページを駆け抜けた後の、「おわりに」が素晴らしい。AIの進化までを踏まえたうえで、いくら科学が宇宙や生命の謎を解き明かしても、人々は変わらず老いや病と向き合っている、だから宿命を受け入れてなお、積極的に生きることを辞めない意志ある人が、新しい哲学を生み出していくだろうと語る。日付は初版の2019年。このあと2021年に著者は病に倒れたものの、驚異的な努力でリハビリを乗り越え、今も著述を続けている。意志ある人間への希望は本物。折に触れ、部分部分を読み返したい一冊だ。(2026.2)
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