死んだ山田と教室
「まじだ、綺麗」「赤い」
遠くの空に浮かぶ仄かな赤色を、三人黙って見つめる。
〈そっか〉
山田の声がする。
〈俺もう、夕焼けって見れねぇのか〉
「死んだ山田と教室」金子玲介著(講談社)
総じて学園ものは苦手なんだけど、「本の雑誌」が選ぶ2024年度上半期ベスト1と聞いて読んでみた。んー、本屋大賞は9位だったんだよね。
男子高2年の9月、2学期初日。夏休みの終わりに突然、交通事故で亡くなった人気者の山田が、声だけの存在になって教室のスピーカーに宿り、クラスメートたちと会話し始める。
男子たちのわちゃわちゃの可愛いこと。しょうもなくて、地頭よさそうで、友だち思いのいい奴たち。戻ってきた山田は言う。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。1993年生まれの著者が卒業した慶応志木高って、こんな感じなのだろうか。さして大事件も起きない、おバカなやりとりは微笑ましく、放課後、教室の窓から夕焼けを見るシーンが切ない。著者の細やかな観察眼。
時間の経過とともに、この面白い設定が煩わしく、重くなっちゃうのは致しかたないところか。それぞれがそれぞれの軌跡で、大人になっていく。どういう読後感を残したかったかな。
メフィスト賞受賞のデビュー作。(2025.12)