« ラグビー知的観戦のすすめ | Main | 名画を見る眼 »

May 04, 2025

アーティスト伝説

お言葉ですが、これからは日本にもシンガーソングライターの時代がやってきます。

「アーティスト伝説」新田和長著(新潮社)

昨年、映画「トノバン」を観た流れで、トークショーも聴いた新田和長さんの著書を読む。70年代ニューミュージックの立役者で、伝説のプロデューサーによる貴重な証言だ。懐かしい、けれど今も古びない才能あるミュージシャンたち、そして名も無きファンたちが音楽のかたち、音楽ビジネスを変えていくさまは、なんともドラマティック。

とりわけ入社3年ほどの間にヒットを連発しちゃうあたり、時代の勢いがあふれて痛快だ。個性とプライドのぶつかり合いは、時にひりひりした緊張を生む。名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」のレコーディングでは、北山修と加藤和彦が言い争い、「花嫁」ではフォークの神様、岡林信康の一言が窮地を救う。ロックとフォークが縄張り争いしていた頃、皆に恐れられていた内田裕也から六本木のパブに呼び出され、意気投合する。
1973年のサディスティック・ミカ・バンドあたりから話は派手になる。PA運搬用のトラックをあつらえ、EMIのレーベル・マネジャーを日本に招待して「黒船」の英国発売を実現する。やがてビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンに弟子入りしちゃう。格好良いなあ。

曲ごとのアレンジやミキシングの解説に触れていて、創作現場の熱気を感じさせる。寺尾聰、平原綾香、小田和正ら、次々登場するアーティストの素顔は、気難しさや面倒なトラブルも含めて興味深い。偶然エレベーターに乗り合わせたユーミンがふと、デビューから半世紀近く経って、当時の現場宣伝マンのことを気遣うシーンは感動的。(2025.5)

« ラグビー知的観戦のすすめ | Main | 名画を見る眼 »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« ラグビー知的観戦のすすめ | Main | 名画を見る眼 »