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September 25, 2024

一千字のあとや先

 百閒の第一創作集にはページが無かった。読者が途中でやめて、あとで読む時、前の続きから読んでほしくない、という理由からだった。
 芸術院会員に選ばれた際、断った。「イヤナモノハ イヤ」だから、と。

「一千字のあとや先」出久根達郎著

古今東西の作家を紹介した連載の私家版第二集、2019年から2年分を収録。古代ギリシャのアリストパネースやら、近松やら、戦後の庄野潤三やら、相変わらずの縦横無尽だ。

名作の紹介はもちろん、作家をめぐるエピソードの情報量が圧巻。なかでも作家同士のつながりが楽しい。「雪」の詩人、三好達治が余命いくばくもない梶井基次郎の作品集を出すべく奔走した。長塚節が「土」を東京朝日新聞に連載したのは、夏目漱石の推薦だった。北條民雄の原稿を「文学界」に推薦したのは川端康成だった。かと思えば、ヨーロッパ留学から帰国した直後、27歳の森鴎外がハイネの詩集を訳し(「於母影」)、その巻頭詩の原作はイギリスのバイロンで…。豊かな文学の響き合い。

読書の喜びに触れたくだりがまた、著者を彷彿とさせて印象的だ。風俗小説の元祖、のち文藝春秋社を興し、芥川賞・直木賞を創設する菊池寛は、高松の中学時代、図書館に毎日通って二万冊読み、上京した翌日に上野図書館に行って「そこに在る小説という小説は、大抵読んだ」とか。凄すぎ。(2024/9)

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