官邸官僚が本音で語る権力の使い方
経済再生担当大臣だった甘利明さんは、内閣官房の幹部が何人かで出向いたときに、「俺は役人を使いまくる」と言いました。「おまえらを徹底的に使うぞ」と言われて、役人はその言葉に奮い立ったんです。
「官邸官僚が本音で語る権力の使い方」兼原信克、佐々木豊成、蘇我豪、髙見澤將林著(新潮選書)
お馴染み兼原氏の座談会シリーズをさらっと。今回は「官邸一強」と言われた第二次安倍政権で、内閣官房副長官補を務めた財務省、外務省、防衛省の3人と、朝日新聞の政治記者が、官僚が強い総理にどう仕え、どう政策目的を達成するか、を語りあう。2023年3月発刊だけど、座談会を開いたのは2022年7月6日、元総理襲撃の2日前とのこと。
素材は安倍政権に限らず、実際に語り手たちが関わったり、先輩から見聞したりした意思決定のシーンで、危機管理、予算編成、通商交渉など多岐にわたる。官僚は職位の高低ではなく、最高権力者=総理との「距離」がパワーであり、パワーの衝突が仕事を滞らせたりする、といった解説がリアルだ。政治家たちの人物評のほか、あるべき体制についても安全保障局との規模とか、内閣官房と内閣府の切り分けとか、具体的に論じる。
まあ、後半はいつも通り、兼原氏、髙見澤氏が安保を語りまくるわけだけど。なかでもインテリジェンスに力が入っているのが印象的。(2023.5)