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June 26, 2022

自衛隊最高幹部が語る台湾有事

東シナ海のような半閉鎖海で紛争が起きれば、必ず沿岸国を巻き込むのである。

「自衛隊最高幹部が語る台湾有事」岩田清文、武居智久、尾上定正、兼原信克著(新潮新書)

シリーズ3冊目は武居・元海上幕僚長がホストとなり、前半でシナリオ別シミュレーションを収録。研究者や議員らが参加して、2021年8月に実施したというが、2022年になって起きたウクライナ侵攻によって、残念ながら、より懸念を呼ぶタイムリーなテーマとなったしまった。
後半はお馴染み、武居のほか岩田・元陸上幕僚長、尾上・元航空自衛隊補給本部長、兼原・元国家安全保障局次長による座談会だ。台湾との連絡経路やサイバー防衛、邦人移送の難しさなど、ずいぶんネタばらしに思えるけれど、その分野ではいずれも常識の範囲なのだろう。
いたずらに危機をあおらず、冷静で前向きな対話の姿勢が重要なのは、いうまでもない。そのうえで、米軍のミサイル持ち込みなど、微妙なところを一部の専門家任せでなく、広く議論しておける土壌が求められる気がする。(2022.6)

 

June 05, 2022

歴史探偵 忘れ残りの記

例によって社の五階から下の通りを行き交う人を眺めていて、女性がぐんぐん美しくなったのに気づいたのも、この二十八年の冬ぐらいから。とくに、このみゆき通りから戦後日本の美人が生まれたのではないか、と身贔屓でなくそう思っている。

「歴史探偵 忘れ残りの記」半藤一利著(文春新書)

2021年に90歳で死去した「昭和史」著者が、その直前に上梓したエッセイ集。初出は文春の書店向けパンフレットを中心に、銀座のPR誌、新聞ほかで、掲載誌・掲載年不明のものが混じっている。内容も肩のこらないつれづれなんだけど、そこは名編集者でもあった著者のこと。古今の蘊蓄やら、和歌・俳句やら、明治の文豪から戦後の駄洒落まで縦横無尽の引用が、尽きない教養、「調べ魔」ぶりを感じさせて楽しい。

なかでも昭和初期、向島での幼少期の思い出は味わい深い。火鉢の「埋火(うずめび)」と少女の哀しみ、北十間川と大空襲の記憶…。そして戦後、花の銀座で過ごした駆け出し編集者の日常が痛快だ。仮採用の身で訳もわからず、坂口安吾の自宅に1週間泊まっちゃった武勇伝など、のちの大物ぶりを彷彿とさせる。(2022.6)

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