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October 30, 2021

バッタを倒しにアフリカへ

研究対象となるサバクトビバッタは砂漠に生息しており、野外生態をじっくりと観察するためにはサハラ砂漠で野宿しなくてはならない。どう考えても、雪国・秋田出身者には暑そうだし、おまけに東北訛りは通用しない。などなど、億千万の心配事から目を背け、前だけ見据えて単身アフリカに旅立った。
 その結果、自然現象に進路を委ねる人生設計がいかに危険なことかを思い知らされた。

「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎著(光文社新書)

深刻な飢饉をひきおこし、「神の罰」と呼ばれるバッタを研究するため、日本人が13人しか住んでいないという西アフリカ・モーリタニアに乗り込んだ、31歳ポスドクの爆笑体験記。
過酷な自然や習慣はもちろん(早々に山羊の丸煮込みが登場!)、待ち合わせから1時間遅れは当たり前、郵便局で荷物の受け取りに袖の下を要求される、フィールドワークに出た砂漠には地雷が埋まっている等々、相当にヘビーな日々を、軽妙に語っていく。
実際、ちょっとやそっとのトラブルでめげる前野氏ではない。子供のころファーブル昆虫記に熱中して以来の、異常なほどにあふれる昆虫愛があるからだ。好きなバッタに没頭して生きていくためには、実績となる論文をものにし、研究職を獲得することが至上命題。
ところが自然は思うようにならないもの。研究するはずのバッタ大発生の知らせは、なかなか届かない。「さしものバッタも私に恐れをなし、身を潜めたに違いない」などと強がってみても、時間と資力ははなはだ心許なく、不安が募る。
なんとか収入を得ようと京大に乗り込んでいくシーンの、とんでもない行動には抱腹絶倒。しかし最終面接で松本紘総長(当時)が語りかける言葉、そしてついに成虫の大群が襲来するクライマックスは大感動だ。
ちなみにウルドとは、籍を置いた国立サバクトビバッタ防除センターの所長から親しみと尊敬をこめて送られたミドルネームだ。新書大賞受賞。(2021.10)

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