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June 29, 2021

天離り果つる国

「かような天離る鄙の地に、まことに城など築かれているのでござろうか」

「天離り果つる国 上・下」宮本昌孝著(PHP研究所)

山深い白川郷に、かつて存在した帰雲城。非情、苛烈な戦国の世にあって、弱小ながら独立平和のユートピアを求めた内ケ嶋氏の闘いを描く。2020年に話題だった娯楽時代長編だ。

戦国なので、まあ残酷だったりお色気だったり、けっこうどろどろなエピソードがてんこ盛り。悪役は伝奇ものっぽい怪物だし、実は兄妹の禁断の恋とか、往年の大映ドラマみたい。だけど架空のヒーロー、竹中半兵衛のまな弟子・七龍太と、野性味あふれる姫・紗雪のコンビの造形が、爽やかでいい。読みながらなぜだか、長谷川博己&川口春奈のイメージが浮かんだ。

金銀の鉱山経営や、火薬の原料になる塩硝の製造など、テクノロジーが切り札になる構図が興味深い。帰雲城についての予備知識がないままだったので、大詰めの展開には愕然としたけど、ラストにまた一捻りあって、にんまり。サービス精神たっぷりです。あ、帰雲城って埋蔵金伝説なんてのもあるんですねえ。(2021・6)

June 13, 2021

令和の国防

アメリカは、一体、インド太平洋地域のどこまでを軍事力を使って守るだろうかというリアリティチェックが必要です。米国の国力は無限ではありません。

「自衛隊最高幹部が語る 令和の国防」岩田清文、武居智久、尾上定正、兼原信克著(新潮選書)

外交官で、2014年新設の国家安全保障局で次長も務めた兼原信克氏が舞台回しを務めた、陸海空の元自衛隊幹部による座談会。2020年6月収録なので、バイデン米大統領の誕生前だし、コロナ禍もまだ半ばではあるが、台湾有事をめぐる危機感など、その後の議論を先取りする部分も多い。

まず歴史と国際情勢を学び、現実を直視して、冷静に分析すべし。そして責任ある立場の者が、責任ある場で逃げずに議論すべし、という論調には、多くの示唆がある。一方で、具体的な人員とか予算とかに話題が及ぶと、自らの組織第一の意識が見え隠れしてきて、胸がざわざわするのは否めない。こういう組織の論理が結局、国家の道を誤らせることになるのでは、と。

巻末には具体的な提言も。まずはこの意味を広く議論できるリテラシーの普及が必要、あまり時間は残されていないのでは、と思えてならない。(2021.6)

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