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April 11, 2021

新作らくごの舞台裏

演者のキャラと作品とがぴったり合ってしまって「これ以上工夫する余地がない」と判断されると、手を出す人がなく、演者が亡くなるとともに忘れられてしまうことになる。

「新作らくごの舞台裏」小佐田定雄著(ちくま新書)

枝雀一門、米朝一門をはじめ260席を超える新作を書いてきた落語作家が、創作の経緯を明かす。時系列に40席を選んで、1席5~8ページほどで、粗筋と工夫のポイントをテンポよく解説。もしかすると定番の古典も、こうして生まれてきたのかな、という発見の数々とともに、噺家はもちろん、ミュージシャンやSF作家まで、ゆかりの人々の横顔も垣間見えて楽しい。
「緊張の緩和」等々、枝雀直伝の笑いのツボを惜しげもなく披露。パフォーミングアートならではの丁々発止もあって、注文した演者のイメージをあえて裏切る噺をぶつけたり、演者が高座で手を加えてさらに面白く成長したり。作家として、いっとき笑いをとるだけでなく、繰り返し演じられ、残っていってナンボ、という気概がいい。ファンにとっても、噺家によって、また同じ噺家でも時とともに演出が変わるのは、落語を聴く大きな楽しみだし。
江戸落語の上方化や、明治期の記録からの復活も数多く手掛ける。当たり前なんだろうけど、東西古今の落語にとどまらない、すさまじい勉強量に驚く。例えば上方では独特の「ハメモノ」=下座音楽の豊かさが楽しいわけだが、これを使いこなすには邦楽の知識が必須だ。落語から発展して、狂言、歌舞伎なども書いているのは、ジャンルの壁が低い上方ならではか。江戸期の文楽と歌舞伎のように、ジャンルを超える担い手の力量とチャレンジ精神が、可能性を広げていくんだろうなあ。巻末に初演年表付き。(2021・4)

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