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September 11, 2020

三体

もし人類が道徳に目覚めるとしたら、それは、人類以外の力を借りる必要がある。

「三体」劉慈欣(リウ・ツーシン)著(早川書房)

1963年生まれ、発電所技術者でもある作家のSF大作をようやく。2015年、アジア人初のヒューゴー賞を受賞、オバマさんも愛読したという話題付き。

いきなり苛烈な文革期から始まるのに面食らう。この過去パートでは、女性天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)が粛清を受けて研究の表舞台から去り、辺境の紅岸基地に勤務する。一方、現代パートではナノマテリアル研究者の汪淼(ワン・ミャオ)が超自然的怪異に見舞われ、謎の手がかりを得ようとオンラインVRゲーム「三体」をプレイする。
延々展開する三体の壮大な世界は、個人的に苦手なファンタジーかと思いきや、ぐいぐい引き込まれていく。なにしろ古今東西の文明、人類の英知が登場するものの、灼熱と極寒という厳しい環境によってことごとく壊滅しちゃうのだ。果たしてこのゲームの意図は…
人類を脅かす驚くべき陰謀が明らかになってくる後半は、もう怒涛。はるか宇宙の知性との交信という、古典的だけど魅力ある展開、そしてパナマ運河で敵のタンカーを「切り刻む」シーンの迫力!

ニュートン力学の三体問題(3つ以上の天体が万有引力によって相互に干渉し合うと、運動の予測が難しくなる現象)がテーマになっているように、様々な科学技術の知識が散りばめられている。中国の現代史の描写には、そのハイテク立国ぶりも横溢。と同時に、文革など人類の知性に対する疑念が語られるのも興味深い。
というわけで、大風呂敷三部作は続く。大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳。(2020・9)

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