« 拾った女 | Main | なぜオスカーはおもしろいのか? »

April 22, 2020

掃除婦のための手引書

クーはバークレーのゴミ捨て場に似ていた。あのゴミ捨て場に行くバスがあればいいのに。ニューメキシコが恋しくなると、二人でよくあそこに行った。殺風景で吹きっさらしで、カモメが砂漠のヨタカみたいに舞っている。どっちを向いても、上を見ても、空がある。

「掃除婦のための手引書ーールシア・ベルリン作品集」ルシア・ベルリン著(講談社)

2019年の話題本をようやく。訳者の岸本佐知子さんが熱烈に惚れ込んでいることは聞きかじっていたけれど、それくらいの予備知識のまま、無防備に引き込まれた。
死後十数年たった2015年にヒットした短編集を底本に、24篇を収録。一つひとつは日常の一コマなんだけど、波乱万丈の実人生を反映して、状況は多彩かつ濃密だ。鉱山町を転々とする流浪の少女時代、暴力と閉塞のテキサス、チリでの裕福な暮らし、4人の子供を抱えたブルカラーのシングルマザー、アル中の泥沼、末期がんの妹と思い出を語り合うメキシコ…
さりげなく繰り出される比喩に、イメージが飛翔して、不意を突かれる。しかも相当悲惨な状況でも、なにやら潔いというか、ドライな手触りが漂うのが新鮮だ。「今までの人生で、”正面ポーチ”でなく”裏のポーチ”にいたことが、はたして何度あっただろう?」と悔いておいて、「無意味な問だ」と切って捨てる。それが人生。
たくさんの間違いを引き受けていくこと。ヘビーでタフな、アメリカ。電子書籍で。(2020.4)  

« 拾った女 | Main | なぜオスカーはおもしろいのか? »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« 拾った女 | Main | なぜオスカーはおもしろいのか? »