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March 25, 2020

チョンキンマンションのボスは知っている

金儲けを仲間や贈与を回していくための「手段」にする。金儲けこそが、社会をつくる遊びなのだと。

「チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学」小川さやか著(春秋社)

1978年生まれの文化人類学者が2016年、香港・チョンキンマンションの安宿を拠点にしたフィールドワークで知り合った、タンザニア出身のブローカーたちの暮らし、来歴、そして「インフォーマル経済」のリアルを描く。何やら明るくていい加減で、したたかで親切。彼らはいったいどうやって、商売を回しているのだろうか?

著者のキャラがまず面白い。なにしろ学生時代、タンザニアに渡って、路上の商売人と仲良くなってスワヒリ語を身につけたというのだから。本書でもタンザニア出身者の世話人的な「ボス」と昵懇になって、日本や中国メインランドと中東、アフリカを結ぶ、融通無碍な中古車やら中古スマホやら雑貨類の売買を間近で観察している。

焦点は、メンバーに「負い目」を感じさせない関係性とはどういうものか、ということだ。それは古くからの「贈与」とも、流行りの「シェア経済」とも一線を画すし、善意とも、普通の市場経済ともちょっと違うらしい。
個人的には正直、実態はよくつかめなかった。多かれ少なかれ不法な側面をはらむ商売のありようは、SNSを使っていたりして面白いんだけど、もしかすると世界中の交易都市と移民たちにありふれたものなのかもしれないし、非常に斬新な概念なのかもしれない。理解するにはけっこうリテラシーが必要かも。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。(2020.3)



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