世界史としての日本史
日中戦争も含めて大東亜戦争という名前で括って、日本を主人公にした物語にしてしまっているけど、そうではなくて、第二次世界大戦という大きな舞台のなかの太平洋部門なんです。そういう見方をしたときに、真珠湾攻撃はどう解釈されるのか
「世界史としての日本史」半藤一利、出口治明著(小学館)
卓越した歴史の語り手である半藤氏と、『「全世界史」講義』などの教養人、出口氏による魅力的な対談録。タイミングは2016年の春ごろだそうだ。
明治維新から対ISまで、様々な事象の背景を、欧米の事情やら相対的な力関係やら、リアルな「国際的立ち位置」から読み解いていく。博覧強記はもちろんのこと、半藤氏からは編集者時代の吉田茂インタビューの逸話なども飛び出して、刺激的。
「世界史のなかの日本を知るためのブックガイド」の章では、「白水社、上下巻」とか「草思社、3巻」とか、まあ歯ごたえありそうな文献が後から後から。半藤氏が「非常な大作で、しかも古本でしか全巻は手に入らないので、ちょっと読者の皆さんにすすめるのはどうかと」とためらえば、出口氏がすかさず「本気で勉強しようと思ったら、これぐらいは読んでほしい」と突っ込む。
国の進路を誤らないためには、広く知恵、教養が必須だ、だから手間ひまかけて発信しているのだ、という強い危機感が伝わってくる。メディアが数字・ファクト・ロジックで全体像を丁寧に語るべき、という指摘も切実だ。電子書籍で。(2020・1)
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