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October 29, 2019

宝島

貧乏とか病気とか、暴動とか戦争とかさ。そういうだれにも止められないものに、待ったをかけられるのが英雄よ。この世の法則にあらがえるのが英雄よ

「宝島」真藤順丈著(講談社)

2018年下半期の直木賞受賞作。とにかくものすごい熱量だ。独特のウチナーグチ(沖縄言葉)もあいまって、全編にみなぎるエネルギーに圧倒され、ぐいぐい読み進めちゃう。

コザの幼馴染み、若きグスク、レイ、ヤマコはキャンプ・カデナから生活物資を強奪する「戦果アギヤー」の一味だった。のっけっから、逃走シーンが命がけで、クラクラする。
やがて進む道は警官、テロリスト、教師と分かれながらも、3人は国家と運命にあらがって激しく生き抜いていく。名もない英雄たちの青春が鮮烈だ。

登場人物に襲いかかる沖縄現代史が重い。戦時中の洞窟(ガマ)の悲惨、B52の墜落・爆発炎上事故、知花弾薬庫でのVXガス放出事故、そして怒涛の1970年コザ暴動。繰り返される災禍(ワジャウェー)と服従。東京出身の著者が書きすすめるのはヘビーだったと思うけれど、英雄オンちゃんの行方というミステリを軸に、しっかりエンタメになっていて、たいした筆力だ。

若者たちの疾走と激しい怒りの日々に、ふと差し挟まれる土地の叡智が、しみじみと染みる。それはどんなに踏みつけられても、息絶えることがない「命どぅ宝」の思いだ。おばあが微笑んで言う。「暗い感情に呑みこまれたらならん。恨みや憎しみで目を曇らせたらならんよ」。秀作。電子書籍で。(2019・10)

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