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August 17, 2019

ケルト 再生の思想

「生と死」や「あの世とこの世」、「光と闇」は二項対立なのではなく、常緑の「循環」する生命のサーキュレーションとしてあることを、「サウィン」というケルトの伝統は、教えてくれる。

「ケルト 再生の思想ーーハロウィンからの生命循環」鶴岡真弓著(ちくま新書)

2019年のアイルランドシリーズの仕上げは、ケルトの解説。かつて東欧に発して、欧州を席巻したケルト文化は世界をどう見ていたのか。近年すっかり渋谷の騒ぎが有名になってしまった「ハロウィン」の起源、「サウィン(万霊節)」から説き起こし、4つの祭日を通して綴っていく。
繰り返されるのは厳しい自然の受容や、農耕牧畜を営むうえでの知恵、そして生命の循環というイメージ。四季に生き、心に八百万の神をもつ日本人にとっては、理屈抜きに馴染める感覚だ。
著者はケルト芸術文化史・美術文明史の研究者だけど、極めて情緒豊かに、その普遍性を説いている。強靭ななキリスト教や、理性に立脚する近代思想が主流となっても、ケルトの思想はそれらと融合しつつ、通奏低音をなしている、という見方だ。ハイライトは終盤に触れている「ケルズの書」。9世紀初頭、アイルランド北東部の修道院で完成した福音書写本は、豊かな色彩と文様で、生き生きと再生のパワーを伝えているという。んー、まだまだ奥が深そうです… (2019・8)

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