この落語家を聴け!
「落語ブーム」という言葉には、もう用は無い。落語は常にそこにある。ただ「客が呼べる噺家がいるかどうか」だけの問題だ。
「この落語家を聴け!」広瀬和生著(アスペクト)
自宅の積読の山から、2008年の話題本を今更ながら。この時点の「いま、観ておきたい噺家51人」の紹介なので、立川談志、柳家喜多八が登場するのがなんとも切ない。しかし2007年「ほぼ日寄席」の立川志の輔あたりから落語を面白いと思い、談春、市馬、喬太郎…と聴いてきた軽めのファンとしては、いわば歴史の証言を面白く読んだ。
先日の落語会で、後ろの席の観客が前方に金髪の男性を見つけ、噂していたのがまさに著者。本業はハードロック・ヘビメタ雑誌の編集長だけど、落語評論家としても本書でブレイク、今や落語会のプロデュースも手がけているという。ほぼ毎日高座に接し、DVDなども細かくチェックしているらしく、そのマニアックな知識量に圧倒される。とはいえ落語を今の時代に生きる、開かれたエンタテインメントとする主張には、多くの人が共感するはずだ。
本書では演者一人ひとりの持つキャラクター、技術、何よりギャグや演出の工夫による独自性を高く評価し、熱く語っている。登場する噺家たちが、その後も着実に進化し続け、さらには一之輔ら新たな真打、二つ目にも人気者が現れている落語シーン。本書の予言がしっかり実現しているといえそう。
個人的は、未体験の噺家さんや演目も盛りだくさん。お楽しみはこれからだ。(2018・8)
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