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February 11, 2018

家康、江戸を建てる

これからの世は、土地ではない。貨幣を制するものが、
(天下を制する)

「家康、江戸を建てる」門井慶喜著(祥伝社)

2018年直木賞受賞作家の、2016年に候補作となった秀作。江戸という都市の建設を担ったプロフェッショナルたちを描く。
治水や上水道、江戸城の建設。空白の荒野に人を呼び込み、経済活動をおこしていくプロセスが、スリリングに再現される。現代にも通じる視点が豊富だ。主人公たちは高名な武将のかげにいて、日本史の教科書には出てこない。しかし強烈な誇りと諦めない心をもって、今に残る偉業を成し遂げていく。独特の、ぶつぶつ切れるような文体が心地いい。

特に初代金座当主となった後藤庄三郎光次の1編は、疾走感満載だ。関が原に至る大名たちのリアルな戦さと、経済の主導権を巡る貨幣の戦争とが、見事にシンクロする。
戦国時代の褒賞は土地だったが、天下を統一してしまえばそれは叶わず、貨幣の意味が増す。国を豊かにする経済活動にもまた、良質な貨幣が欠かせない。では誰が貨幣発行の権威と技術を握るのか。

庄三郎は文禄4年(1594年)、今の日本銀行本店がある場所で小判鋳造を開始。やがて天下分け目の勝敗が決した直後、貨幣の勝利を宣言するという歴史的な役割を担うことになる。家康は覇権を手にするため、いったい何をしたのか。卓越した判断を、経済の観点から解き明かす視点が面白い。
栄光の陰で、庄三郎が引き受ける宗家との軋轢がまた、静かに胸に迫る。強烈な自負心と大きな時代の流れによって、宗家を打ちのめす道を選ぶのだけど、胸のうちには葛藤を抱えて生きる。新旧交代という人生のドラマ。巧いなあ。(2018・2)

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