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January 08, 2017

あひる

あひるを飼い始めてから子供がうちによく遊びにくるようになった。

「あひる」今村夏子著(書肆侃侃房)

日本翻訳大賞の創設者、西崎憲さんお勧めの1冊を読んでみた。表題作は西崎氏が口説いて、編集する文学ムック「たべるのがおそい」vol.1で発表されたもの。ほかに書き下ろしの「おばあちゃんの家」「森の兄弟」を収録。
メルヘンタッチなんだけど、決して油断はできない。田舎町に住む孤独な老人や貧しい子供の、ごく平凡な日常に潜む歪みをじわじわ描いて、ぞくっとさせる。
庭先で飼い始めたあひる。インキョと呼ばれる、おばあちゃんの変調。何気ないエピソードが、何やら訳ありの家族が抱える欠落を浮かび上がらせる。でも誰もが苦みを腹におさめて、日々を続けていくのだ。
著者は1980年生まれ。太宰治賞、三島由紀夫賞を受けた後、2年ぶりに発表した本作で、芥川賞候補に。書評家・豊崎由美さんによると「書かないテクニックがある」とのこと。確かに読む者のイメージを刺激する力量がありそうだ。ありふれた田んぼに、幻のように舞い降りる「孔雀」の不穏さが印象的。(2017・1)


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