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December 23, 2016

戦争まで

歴史上で実際に起こったことについて、起こる可能性が高かったから起こったと単純には言えない、との厳粛な思いに打たれざるをえない。

「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」加藤陽子著(朝日出版社)

栄光学園での講義録「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」の東大教授が、今度はジュンク堂書店池袋本店のイベントで、公募の中高校生を相手に太平洋戦争前史を語る。取り上げるのは3つのターニングポイント、すなわち1932年のリットン報告書、1940年の日独伊3国同盟、そして1941年の日米交渉。なぜ別の道をとれなかったのか、あえて歴史のイフを問うていく。

材料は、きれいに整理された加工品ではない。議事録や講演記録など、できるだけ当時の、そして当事者の肉声をたどる、手間のかかる作業だ。まるでジャック・フィニイ「ふりだしに戻る」のよう。中高校生向けとはいえ、決して易しい内容ではない。
丁寧に記録を付き合わせていくからこそ、見過ごせない情報の非対称や誤解が浮かんでくるのだろう。例えば閣僚と軍部の間で、どのくらい正確に戦争遂行力の判断が共有されていたのか。また外交交渉の前線と本国とで、相手の出方をどう読んでいたか。豊富な情報を深く分析し、考えに考え抜いた意思決定だったのか? ガラス細工のような、重大な国家の岐路。

本書のベースになった連続講義は2015年。冷静な語り口ながら、著者は一定の立場から、安保法制や憲法改正論議の流れに強い危機感を示す。そして2016年、世界はどんどんキナ臭くなっているように思える。今こそ知るべき歴史なのかもしれない。(2016・12)

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