王とサーカス
「もう一度言うが、私はお前を責めようとしているのではない。お前の後ろにいる、刺激的な最新情報を待っている人々の望みを叶えたくないだけだ」
「王とサーカス」米澤穂信著(東京創元社)
旅行情報の仕事の下調べで、ネパールを訪れたフリーラータ―大刀洗万智は、王族殺害という大事件に遭遇、現地ルポに乗り出す。ところが取材相手が死体で発見され、事情聴取を受けることに…
2016年「このミス」1位作。2007年の「インシテミル」で本格のイメージをもってたけど、青春ものがメーンの作家だったんですね~ 本作はその派生シリーズで、馴染みの薄い国での歴史的事件という設定が、まず異色。
市民と警官隊の衝突、一転して外出禁止令で静まり返る首都、さらに殺人事件の謎解きへ。とはいえ犯人捜しのインパクトは薄めで、ヒロイン大刀洗が、フリーの物書きとして覚悟を定めていく過程が印象的だ。
遠い国で起きた歴史的事件のニュースに接して、ただ何らかの刺激を消費していく私たち。その陰にある個人の思い、民族の思いをどれほど感じられるのか。悩んでも、伝え続けるしかない。そこに出来事がある限り。(2016・10)
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