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June 19, 2016

東京プリズン

「そうだな。やはり感服と言ったほうがいいな。なんたってひとつの民族がそれほど歴史を忘れて生きていけるとは!」

「東京プリズン」赤坂真理著(河出文庫)

2010年から2012年の雑誌連載を2012年に単行本化。毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、紫式部文学賞を受け、2014年に文庫化された小説を、戦後70年をへた平和安全法制施行の年に読んでみた。

物語は重層的だ。メーンは1980年から81年、米メイン州の田舎町に留学した16歳のマリが、進級をかけた課題として全校公開ディベートに挑む過程を描く。テーマは難題「天皇の戦争責任」であり、1964年生まれの少女が突如、異国で単身挑む東京裁判だった。
そこに2009年から11年にかけ、成人し、離婚などをへて物書きになったマリが、留学当時やこれまでの暮らしを振り返るシーンが挟まる。30年の時をへだててつながる電話、というSF的仕掛けを駆使。かつて東京裁判資料の翻訳を手伝っていた母との、長い長い心のすれ違いから家業の行き詰まり、父の死、バブル崩壊、大震災まで、戦後ニッポンのひずみを描いていく。

正直、感受性の強い少女の独白とファンタジーという取り合わせは個人的にあまり得意でなく、500ページ強を読み取すのはなかなかきつかった。とはいえ議論の多い現代史に真摯に向き合い、考えようとする思いは伝わってくる。イメージの混沌のなかから、意外に率直な作家の姿が垣間見える。(2016・6)

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