資生堂インパクト
「女性社員のやる気がみえない」と嘆く企業は、自分たちの言動や女性社員の待遇・育成方針、職場環境に問題がないかを一度考えてみるといい。
「資生堂インパクト」石塚由紀夫著(日本経済新聞出版社)
資生堂は2013年、「育児のため時短勤務を選んでいる社員も遅番、土日勤務に加わるように」という厳しい方針を打ち出した。手厚い育児支援などで従来、「女性にやさしい会社」として知られていただけに、「業績難から逆コースに踏み出した」と議論を呼び、メディアでは「資生堂ショック」と取り沙汰された。果たして経営者の狙いは何だったのか、現場の管理職や当の女性社員はどう受け止めたのかを、丹念に検証する。
おりしも少子高齢化による労働人口の減少への対策として、「女性活躍推進法」が動き出した2014年。政府は女性の管理職への登用の旗を振り始めた。女性を多く採用し、子育て期に働き続けるために勤務を軽減する。その先に、管理職への道が自然に開けるのか? 責任を担っていく意欲の醸成、すなわち女性にとって「働きやすい会社」から「働き甲斐のある会社」へと、視点を替えなければならないのではないか。
経営という冷徹な現実の前に、資生堂の試みは選択肢のひとつでしかないだろう。それでもこの葛藤が、多くの経営者や管理職や働く人々にとって、決して他人事でないのは確かだ。(2016・6)