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April 08, 2016

多数決を疑う

多数決は単純で分かりやすく、私たちはそれに慣れきってしまっている。だがそのせいで人々の意見が適切に集約できないのなら本末転倒であろう。それは性能が悪いのだ。

「多数決を疑う 社会的選択理論とは何か」坂井豊貴著(岩波新書)

選挙で国民に信を問えば、その政策は「民意」を反映したとして、信任を得る。そんな大事な民意を見極めるとき、私たちはなんとなく、多数決が民主主義の基本だと思い込んできた。でも本当に、多数決こそが集団の意志を反映するのだろうか? 気鋭の経済学者の一般向け新書を電子書籍で。

例えば2000年の米大統領選挙。ジョージ・W・ブッシュが事前の世論調査結果を覆し、アル・ゴアを破った。フロリダのカウント疑惑などのゴタゴタが記憶に残るが、実はラルフ・ネーダーという第3の候補の登場でゴア票が割れ、ブッシュに勝利が転がり込んだという。就任の年に911が勃発、ブッシュ政権が「テロとの戦争」に突き進んだことを考えれば、どういう理屈で選挙制度を設計するかが歴史にもたらす意味は、とてつもなく大きい。

著者はこういう「多数の人々の意思をひとつに集約する仕組み」などの研究で活躍。200年以上前のルーツから説き起こして、古今東西のエピソードを駆使しつつ、思考の道筋を平易に解説している。
学者同士の確執を推測してみせるなど、語り口は軽妙だが、望ましい集約ルールを追求しようとする姿勢はタフで、厳格だ。票割れの問題や、少数派の尊重などの課題を一つひとつクリアにしていく。その道程が、近代市民社会の根っこを問う作業。政治学とも重なる領域であり、経済学の広がりも感じさせて面白い。(2016・4)

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