記者はつらいよ
だんだん分かってきた。楽な仕事などないのだ。
「記者はつらいよ」仙川環著(ハルキ文庫)
著者お得意の医療ミステリーではなく、明るいお仕事小説の中央新聞坂巻班シリーズ3作目。ワークライフ・バランスを求めて、あまりハードでなさそうな企画部署に異動したのに、ニュース取材をするはめになって苦労してきた「平均点記者」の上原千穂が、今度は一面連載班に組みこまれて奮闘する。
部際プロジェクトのはずが、メンバーは所属部の利益にこだわってはじめから非協力的だったり、心の病を家族にも隠していたりと、トラブル含み。乗り込んできた、お馴染み超横暴なキャップの坂巻が引っ掻き回すうえに、上司はどうにも頭が固くて、企画内容に理解を示さない。結局、ものごとは合理的な判断というより、相変わらずの社内の駆け引きで決まってしまう。
働いていれば、思い通りにならないことは多い。引くべき時は引かなければならない。それでも諦めずに粘っていれば、手ごたえを感じることもある。誰もが経験する、普通に働くということを描いて爽やかだ。(2016・2)
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